<背景>
PD-1抗体、PD-L1抗体の治療により予後は目覚ましいものとなったが、一方で17-19%程度の人にしか反応がないことが分かっており、non-responderをresponderとする方法の解明が必要な状態である。
これまでの基礎的な報告では局所放射線療法により免疫療法への反応を刺激することが分かっている。今回はKEYNOTE001試験を基にペンブロリズマブ投与前に放射線療法を受けた患者の病状コントロールと肺障害の評価を行った。
<方法>KEYNOTE001試験の進行性NSCLC患者に対し、PFSとOSから治療前放射線照射の効果を評価した。更に、治療前胸部照射とペンブロリズマブ投与の加療の肺毒性についても評価を行った。
登録患者:18歳以上、advanced NSCLC、PS0-1、臓器障害のない患者。
除外基準:IPの既往、全身性免疫抑制療法、activeな自己免疫疾患の既往あるもの。
※PD-L1抗体の表現はPD-L1>1%を陽性としている。
【投与方法】
Pembrolizumabを2mg/kgあるいは10mg/kgを3週ごと、あるいは10mg/kgを2週ごとに投与した。AE出現時の基準に沿った減量は認められた。
PD、強い毒性、あるいはその他継続不能な理由が出来るまで投与継続した。
【評価】
放射線照射群とそれ以外、および頭蓋外照射群とそれ以外に分け、PFS,OS,肺毒性に影響を与えるかを評価した。
AEについては治療サイクル毎のday1と、最終投与30日後のフォロー時に評価した。
CTあるいはMRIは9週ごとに撮影され、irRCを元にPDを評価した。
<結果>
98人の患者が登録された。うち1名は途中転院があり、97人が今回の研究に登録されている。
【投与量内訳】
9人 2mg/kg/2w
35人
10mg/kg/2w
53人
10mg/kg/3w
【照射】
42人/97人に放射線療法既往あり
うち38人/97人に頭蓋外病変照射歴あり
24人/97人に胸部放射線照射歴あり
1 course目投与の9.5か月前(中央値)に照射していた。同時に行った例はなし。
全患者のPFSは2.1か月、6か月生存率は33.7%だった。
All
radiation
|
No
radiation
|
Hazard
Ratio
|
|
80人PD後のPD人数
|
31人
|
49人
|
|
PFS
|
4.4か月
|
2.1か月
|
0.56
|
6か月PFS
|
49%
|
23%
|
|
OS
|
10.7か月
|
5.3か月
|
0.58
|
6か月OS
|
73%
|
45%
|
Extracranial
R
|
No
extracranial R
|
Hazard
Ratio
|
|
80人PD後のPD人数
|
27人
|
53人
|
|
PFS
|
6.3か月
|
2.0か月
|
0.50
|
6か月生存率
|
54%
|
21%
|
|
OS
|
11.6か月
|
5.3か月
|
0.59
|
6か月OS
|
75%
|
45%
|
PFSに影響する因子としては、年齢・喫煙・PS・頭蓋外照射が該当した。
一方で治療line、診断までの期間、性別、病理、診断時病期分類などは関係なかった。
【副作用】
全Gの肺毒性 :44人/97人(45%)
胸部照射歴のあるPtの肺障害:15/24(63%)
照射歴なしのPtの肺障害 :29/73(40%)
照射群の方がAEを起こす可能性は高かったものの、G3以上のAEに関しては照射群とそれ以外で差はなかった。
OS中央値:32.5か月だった。
死因としては腫瘍の進展が66人、4人が呼吸不全、3人が不明、2人が感染症、1人がDAD、気胸が1人、医原性の消化管穿孔が1人、PTEが1名。全て照射・治療とは関係ないと結論付けられた。
<discussion>
・特に照射群では照射なし群と比較すると高PD-L1患者が少ないにもかかわらず、明らかに良好なPFSを誇っていた。
⇒もしかするとnon-responderをresponderへとconvertするポテンシャルを持っているかもしれない。
・照射とペンブロリズマブの併用は臨床的には許容範囲内であり問題ないと考えられるが、AEに関してはきちんと見ていく必要がある。
Limitation:
・Keynote001から持ってきた患者であり、baselineの違いはある。
⇒特に照射された患者はline数が多く、診断から投与までの期間が長く、照射群の方が相対的により未熟な腫瘍であった可能性も考えられる。しかしsubgroup解析では期間とline数はPFSに寄与していないとの結果であり、PFSが良好だったのは少なからず放射線照射によるところがあるだろう。
・放射線照射の量・回数・照射部位についての情報は得ることができなかった。また、単施設研究となっているため、施設バイアスの否定はできない。
<感想>
KEYNOTE021,KEYNOTE189,KEYNOTE407試験を始めとした免疫療法+化学療法併用試験は多く報告されており、今後も≪免疫療法+その他療法との併用使用≫は議論の中心となっていく事が濃厚である。
今回はその一つである照射+免疫療法のいわゆる「アブスコパル効果」に関しての報告。局所治療である放射線治療により、照射部位とは別部位にも腫瘍縮小効果があるというアブスコパル効果は50年以上前から知られているものの、あくまで基礎での報告が主軸であり、少なくとも呼吸期領域では実際の効果としてははっきりしていない。本報告は臨床にて優位な差が出た興味深い内容だった。
これを踏まえれば、例えば姑息照射の比較的多いsmall患者への免疫療法が使用可能になった際はかなり期待できる結果となるかもしれない。一方で、例えば予防的WBRTのような腫瘍細胞数個といったレベルでも効果があるのか、あるいはある程度のmassがあるところに照射が必要なのかなどまだわからないことは多く、今後の詳細が待たれる状態である。ただ、本報告のPFS,OSの結果を見ると80%程度いるPD-L1陰性患者への治療法としては、今後希望となっていくかもしれない。
(担当:児玉、まとめ:児玉)
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