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2017年6月21日水曜日

Alectinib versus Crizotinib in Untreated ALK-Positive Non–Small-Cell Lung Cancer


<背景>現在ALK陽性NSCLCに対してはクリゾチニブが第1選択薬(median PFS 10.9か月)となっている。一方、ALK陽性患者はCNS転移が多いことで知られており、CNS再発は最もよく見られるPDのタイプの一つである。
アレクチニブはALKに対する高選択性の阻害剤であり、全身性・更にCNSにも効果のある第2世代ALK阻害剤である。
BBBにおいて P-glycoproteinP-gp)を介した薬剤排泄システムが存在しているが、アレクチニブはP-gpに基質としてほとんど認識されず,このシステムによる血中への排泄がほとんどないことが in vitro 試験で認められている。臨床的にもアレクチニブのCNSに対する効果が認められている。
今回、chemo-naiveALK陽性NSCLCに対し、第1世代ALK阻害剤であるクリゾチニブとアレクチニブとを比較した。
<方法>
Open labelphase 3試験であり、未治療、ALK陽性NSCLC患者303(98施設)が登録された。対象は1:1にアレクチニブ600mg 12回かクリゾチニブ250mg 12回投与された。
ランダム化に関してはPS、人種、CNS転移を念頭に行われている。MRIによる画像撮影を8週ごとに行い、評価の基準としている。また、Crossoverは、承認されている国に関しては承認されたが、それ以外は許容していない。

対象:18歳以上、PS0-2、未治療のALK陽性患者。無症候性の脳転移は許容された。
放射線照射歴に関しては登録14日前までに完了していれば可とした。
PE:主治医評価のPFS
SE:第3者機関のPFSCNS PDまでの期間、ORROS

<結果>
PD、ないし死亡した患者はアレクチニブ41%(62/152)に対し68%(102/151)と大きく差がついた。第3者機関でのPFSでもアレクチニブのほうが圧倒的に高く(アレクチニブ68.4% vs クリゾチニブ48.7%)Hazard Ratio0.47であった。
その他結果は以下の通り。
ORR
  アレクチニブ 82.9% vs クリゾチニブ 75.5%
CNS progression
 アレクチニブ12%   vs クリゾチニブ 45%
CNSへのCR
アレクチニブ8(38%) vs クリゾチニブ 1(5%)
CNS responseの中央値
  アレクチニブ 17.3か月  vs  クリゾチニブ 5.5か月
計測困難なCNS(髄膜肥厚など)への効果
  アレクチニブ 59%    vs   クリゾチニブ 26%
計測困難なCNS(髄膜肥厚など)CR
アレクチニブ 59%    vs   クリゾチニブ5%
G3-5 AE
  アレクチニブ 41% vs クリゾチニブ 50%
 特にクリゾチニブでは嘔気、下痢などの消化器症状が多く、アレクチニブでは血中ビリルビン上昇、筋肉痛、貧血、光線過敏などのAEが多かった。
死亡はアレクチニブ3%、クリゾチニブ5%とほぼ変わりなかった。治療関連死亡はクリゾチニブで2人のみであった。

PFSの中央値はアレクチニブで評価不能に対し、クリゾチニブ 11.1か月
OSの中央値は両者ともに評価不能であった。

subgroup解析では喫煙者とPS2でほぼ同等の結果となっており、それ以外はいずれもアレクチニブが優位となった。しかし喫煙、PS2に関してはmassが少なく正確な評価とは言えない。

<考察>
2世代アレクチニブと第1世代クリゾチニブのhead-to-headの試験である。
元々ROSをターゲットに開発されたクリゾチニブはMETROSに対してもキナーゼ阻害活性を持つ多分子標的薬である。それに対しアレクチニブは ALK の酵素活性に対するより高選択な阻害効果が報告されている薬剤である。
今回は高選択性なアレクチニブの有効性が存分に発揮された結果となった。同様の研究は日本人のみでも行われており(J-ALEX試験)、これも非常に良い結果が出ている。
アレクチニブのPFSが良好であることは以前から知られているが、OSがどうなるかはALK阻害剤の効果が高いこともあり、まだ不明である。しかし恐らくアレクチニブのほうが良い結果となることが推測される。
現状のガイドラインでは1st lineクリゾチニブとなっているが、今回の報告、およびJ-ALEX試験の結果を見ると近いうちに1st line アレクチニブとなっていくことは確実である。となると今後クリゾチニブを使用する状況としては、アレクチニブfailureに対する2nd lineROS変異に対してなどになると思われる。上記の通りクリゾチニブのほうが「よりブロードな」効果があることを考えると、2nd lineとして使用することでPFSの延長効果は多少なりともある可能性がある。これについては今後の報告待ちとなるだろう。
今後も新ALK阻害剤(brigatinibLorlatinib)が控えていることもあり、本報告のOS結果が出るころには話題が他に移っている可能性もありうる。しかし、PFSORRCNSへの効果、AEいずれもがこれほどまでによい結果となっている以上、しばらくはアレクチニブの全盛期となっていくだろう。
(抄読会担当:井部、まとめ:児玉)

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