<Background>
近年新薬として認可された抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体はメラノーマ、NSCLC、腎がん、ホジキンリンパ腫、膀胱がんなどに適応が拡大されてきた他、今後もdurvalumab(抗PD-L1抗体)、elimumab(抗CTLA-4抗体)などが開発される予定となっている。
免疫療法の副作用自体は抗癌剤と比較すると温和なものが多い一方、間質性肺炎など時に重篤な副作用が出現することも報告されている。
間質性肺炎は抗癌剤(ドセタキセル、ゲムシタビン、ブレオマイシン)や分子標的薬(EGFR-TKI、rapamycin阻害剤)、放射線療法などでも起こりうる副作用であり、これまでの報告では抗PD-1/PD-L1抗体での出現率は0-10%程度とされている。しかしその発生機序に関しては未知な部分も多い。
今後、免疫療法は更に使用頻度が多くなることが予想され、それと同時に副作用の対策も重要となる。今回、その発生頻度と共に臨床初見・画像所見なども説明する。
<methods>
患者:豪米2施設計915名。豪施設はメラノーマのみ、米施設はその他疾患も含む。
除外基準:化学療法・TKI・CTLA-4以外の免疫療法を併用した患者
感染症・悪性腫瘍の浸潤などの、IP以外の明らかな病理学的な所見が認められるもの
登録された全患者に対し抗PD-1/PD-L1抗体が投与されている。CTLA-4併用患者は許容されている。評価は腫瘍径にて行い、2人の放射線科医により読影した。
<results>
全体でのILD発生率は5%であり、CTLA-4併用例のほうが頻度としては多かった
(10%vs3%)。PD-1抗体投与患者とPD-L1抗体投与患者の間では頻度に差は認められなかった。
肺炎までの発生期間は投与後9日~19.2か月と広範囲であった。
その他症状としては息切れ(53%)、咳(35%)、発熱(12%)、胸痛(7%)などであり、半数程度の患者が肺炎出現時に気道関連の副作用が出現していた。
【IPの副作用】
43名の患者でIPが出現した。
薬剤を併用した場合の方がIP出現率は高かった。
発生率は疾患に関係せずほぼ同等であった。
PD-1とPD-L1の間で発生率には差がなかった。
Grade1,2の多くは外来にて休薬
Grade2の一部(6例/31例)は入院しステロイドによる加療
Grade3は全例入院加療
であった。
全体の中で5例(12%)がステロイド治療にも関わらず改善が認められず、追加の免疫抑制剤使用したものの最終的には死亡している。うち3名は感染,1名は癌の進展、1名はIPそのものによる死亡であったと推測される。
11例が休薬中/ステロイド治療中にIPを再発している。うち8人は最終的に改善したものの、3人が死亡した。
また、12人がIP寛解後に免疫療法をrechallengeしている。(grade1だった患者が9人、grade2が3人)
このうち9人はIPの再発なく経過したものの、3人は再度IPを起こした。
<感想>
免疫療法関連の副作用として問題になるIPについての論文だが、Pseudo progressionについてIPとの鑑別方法の記載は認められなかった。
現状では免疫療法後に酸素化悪化していた場合、仮にpseudo progressionの可能性があったとしても、リスクを考えるとIPと考えて加療せざるを得ないが、ステロイド使用により免疫療法の効果自体に影響が出てしまいかねないことを考えると難しい問題となる。現状報告されているpseudo progressionはすべて、IPとして加療後に腫瘍径も縮小したためpseudoの可能性がある、というような報告であり、具体的な定義は存在していない。陰影の分布などで鑑別ができるかもしれないが、現状ではすべてIPとして治療していくのが妥当なところであろう。
またrechallengeの問題も重要な問題である。特に免疫療法にて非常によく効いた場合、IP出現時にどうするか。Bristolの添付文書としてはrechallengeは推奨されておらず、一方病院によってはrechallengeが前向きに検討されている施設もある様である。免疫療法はlate lineになれば効果は薄くなることも踏まえると、仮に行う場合は「pembrolizumab⇒irAE⇒CDDP+Pem⇒PD⇒Nivoなど」といったように3rd line以降になる可能性が高いが、rechallengeによるリスクを検討すると手が出しづらいと考える先生が多かった。
本文でも述べられているように今後pembrolizumab、nivolumabなどの免疫療法は更に使用頻度が上がっていくと考えられ、実臨床でこのような問題になることは十分考えられる。今後の報告が待たれる内容であった。
(担当:濵元、まとめ:児玉)
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