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2017年7月26日水曜日

First-Line Nivolumab in Stage IV or Recurrent Non–Small-Cell Lung Cancer

昨年10月コペンハーゲンのESMO2016で発表された内容です。2017年6月にPublishされています。改めて、KEYNOTE024との違いを確認しました。
PMID:
28636851
<背景> 
NivolumabNSCLCに対してのcheckmate017checkmate057試験でDTXと比較して優位にOS,PFSを延長させることが明らかになり、以降免疫療法の分野は急速に進歩している。
 Checkmate012試験(phase1)では20人のNSCLC患者に対しnivolumab単剤を使用した結果を報告している。PD-L1発現が5%以上だった10人の患者のORR50%mPFS10.6か月と報告され、その他論文でもPD-L1低発現患者、発現のない患者でnilovumabの治療効果があったとする報告は散見されている。この事から本論文では閾値をPD-L1発現>5%としてnivolumabを使用した際の効果をopen labelphase3試験として報告する(Checkmate026)


<方法>
対象:StageⅣ、ないし術後再発したNSCLC患者でchemo-naïvePD-L1発現>1%患者。
   PS0-1、評価可能病変を持つ。

脳転移患者は、登録2週前より無症候であることが前提として認められた。
姑息的照射も登録2週前までに終了していれば可能とした。

除外:EGFR,ALK変異陽性、自己免疫疾患の既往のある患者

以上の対象患者に対しNivolumab(3mg/kg/2)あるいはPtベース化学療法を行った。chemo群からnivolumabへのCrossoverは許可された

PE:PFS
SEOS, Response rate
【その他】
 患者それぞれのMutation-burdenの量を計測し、low(0-100)medium(100-242)high(243以上)3群に分けた。3群間での効果についても検討した。

<結果>
1325人がエントリーされ、うち541人が無作為化された。271人がnivolumab群、270人が化学療法群に分類された。
全体の39%の患者が登録前に照射歴があった。


Nivolumab
Chemo
Hazard Ratio
Median PFS
4.2か月
5.9か月
1.15
Median OS
14.4か月
13.2か月
1.02
RR
26%
33%

G AE
71%
92%

G3以上 AE
18%
51%

治療中断
10%
13%

死亡
2(MOFIP)
3(FN,敗血症)


Subgroup解析においても明らかにnivolumab群が優位なものは認められなかった。

 【mutation burdenの結果】

Nivolumab
Chemo
Hazard Ratio
High mutation burden群 でのRR
47%
28%

High mutation burden群 でのPFS
9.7か月
5.8か月
0.62
OSには優位な差は認められなかったがChemo群の68%nivolumabへのcrossoverを行っていた。
mutation burdenPD-L1>50%の両方を持つ患者群のRR75%と、片方しか持たない群より明らかによい成績となった。

<考察>
stage/再発NSCLCPD-L1>5%の患者に対する1st line nivolumabchemotherapy群と比較して優位な差は認められなかった。その理由の一つに患者背景に若干の偏りがありnivolumab群に状態がやや悪い患者が多かった可能性が考えられる(meta20% vs 13%、腫瘍径82mm vs 68mmなど)
Subgroup解析でPD-L1>50%に対するnivolumab群とchemo群の奏効率はほとんど変わらなかった(34% vs 39%)。従来の報告と異なる結果がでた理由として、本研究のデザインとして50%以上の患者に対する層別化を行っておらず、人数にも若干の偏りがある(32 vs 47)ことが挙げられる。
PD-L1発現>50%high mutation burdenの両方があることはnivolumabの奏効によい因子と考えられている。本研究でも同等の結果が出ているが、あくまでも副次項目であり更なる研究が必要である。

<感想>
1st line nivolumabchemotherapyに対する優位性を狙った論文だが、結果的にはnegative studyとなった。疑問が残る点として、5%を基準値として試験デザインを行った点であるか。Phase1 Checkmate012試験の20例を元に基準設定したと記述されているが、大規模な試験を行うには理由としては弱いのではないか。PD-L1>50%で優位な結果を出したPembrolizumabとの差別化を図る意図もあったのだろうが、negative studyとなったことで1st linepembrolizumab優位な状態が加速していく可能性が考えられる。
(担当;濵元、まとめ:児玉)

2017年7月21日金曜日

西埼玉中央病院 呼吸器診療1周年記念

2016年7月より開始した西埼玉呼吸器診療ですが、1年経過致しました。西埼玉の有志が集まって頂き、お祝いの会を開催しています。
 集まってくださった先生方、ありがとうございました。
 これからもどうぞよろしくお願い致します。
(呼吸器科 一同)

2017年7月19日水曜日

Incidence of pneumonitis with use of PD-1 and PD-L1 inhibitors in non-small cell lung cancer: A Systematic Review and Meta-analysis of trials.

《背景》

PD-1/PD-L1阻害剤が開発されてから、そのNSCLCに対する臨床効果の高さが注目されている。
しかしT細胞の活動性を増加させることによる自己免疫疾患関連副作用 (irAE)も報告されており、肺臓炎もその一つとしてNSCLC患者の4%程度の割合で起こることが知られている。
これまでの報告ではPD-1PD-L1で肺臓炎をきたす確立が異なることを指摘されている一方、そのsystemic reviewやメタアナリシスはまだ報告がない。
この事から今回我々はて肺臓炎を起こす確立と使用する薬剤についてのメタアナリシス調査を行った。




<方法>
対象:Medline, EmbaseScopusに登録されている論文で nivolumab, pembrolizumab, atezolizumab, durvalumab, avelumab5種類のPD-1/PD-L1阻害剤について報告した試験を確認し、その副作用(G,G3以上)をきたした確立を調査した。
 
使用した論文は
    NSCLCに対しPD-1/PD-L1阻害薬を使用している単アームないしランダム化試験
    CTCAE gradeに沿った肺臓炎の評価を行っている
    その他と併用した比較試験では単剤のみ使用した群についてのみ
とした。

目標:chemo-naïve患者と2nd以降でのirAE発症率の違い、使用する薬剤によるirAE発症の違いを調査する。

<結果>
最終的に19試験計5038名にてメタアナリシスを行った。

<内訳> 
PD-1: 12 (nivolumab 9例、pembrolizumab 3)
PD-L1: 7 (atezolizumab 5例、durvalumab,avelumab1)

phase1 6例、phase2 6例、phase3 7
・単アーム 13例、ランダム化試験6



PD-1
PD-L1
P
G肺臓炎
3.6%
1.3%
0.001
G3以上の肺臓炎
1.1%
0.4%
0.02
nivolumabpembrolizumabでは肺臓炎をきたす頻度に明らかな差はなかった。


Chemo-naive
Previously-treated
P
G肺臓炎
4.3%
2.8%
0.03
G3以上の肺臓炎
0.5%
1%
0.1
PD-1PD-L1chemo-naïveに対する肺臓炎の頻度に差はなかった。

<考察>
PD-1PD-L1と比較して全GG3以上の肺臓炎の頻度がいずれも高値であった。
またearly lineでの使用は全Gの肺臓炎をきたす確立が高値であった一方G3以上に限ると優位な差は認めなかった。
肺臓炎による治療関連死は計7例認められ、いずれもPD-1抗体使用例であった。この7例は治療期間・量などには関連性がなかったものの、6/7人が過去に喫煙者であり、3/7人に照射歴があった。
Early linePD-1で肺臓炎が増加する理由や、smokerでの致死率が高いことなどの原因は不明であり、様々な複合的要因が絡んでいると推測できる。

Limitation
Open-label試験が多く、肺臓炎の症例報告においてバイアスがかかる可能性は高い。しかしIPや肺炎などはこのメタアナリシスでは除外しており、そのバイアス自体は極端なものではないだろう。

<感想>
irAEについてのメタアナリシスであり、様々なバイアスの可能性はあるもののPD-1 > PD-L1irAEを報告している。
Chemo-naïveな患者に対してのAEが比較的高値である点は、PD-1を可能な限りearly lineで投与したいという現状の認識とは相反する。考え方としてはearly line時はリスク因子を同定しながら予防的加療、厳重なフォローを行うこととなるだろう。

また、本論からだとある程度のリスク因子(例えば言及されているように放射線照射歴や喫煙歴など)がある場合はPD-L1を使用した方がよいと考えることができる。現時点ではatezolizumabは臨床まで至っておらず、仮に効果がPD-1と同等であれば当然リスク回避目的にatezolizumabを使用していくこととなるかもしれない。今後のatezolizumabの結果が待たれる。
(担当;薬剤科福田、まとめ:児玉)