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2017年12月27日水曜日

2018年1月のJournal Club

【抄読会担当者 2018年1月】 
             2018年 1月10日  :薬剤 福田
     2017年 1月17日  :(お休み)
     2017年 1月24日  :感染 大学院生
     2017年 1月31日  :薬剤 大越
     
      順番は、適宜相談にて変更いたします。都合悪い場合は、ご連絡ください
                           (2017年12月27日Ver1.0)
                           (2018年1月17日Ver2.0)

Oral anticoagulants for prevention of stroke in atrial fibrillation: systematic review, network meta-analysis, and cost effectiveness analysis.

今年最後の抄読会です。児玉先生が抗凝固薬のメタアナリシスを選んで解説してくれています。
<背景>
Afの頻度は10年経るごとに2倍に増加し、80-90歳の高齢では9%近いとされている。
Afがあることで血栓のリスクは5倍近くになるとされており、イギリスで毎年起きる脳梗塞13万人のうち20%Afによるものとされている。
ワーファリンは脳梗塞の予防となるものの、それに伴う出血は入院の原因としても非常に多い。また、INRにモニターが必要であり、これだけでもイギリスだけで毎年9千万ポンドもの金額が費やされる。またワーファリン必要な患者のうち46%は実際に使用しておらず、更にその40%INR2.0-3.0に達していない。
近年DOACの出現により、ワーファリンによる制約が解消されている。これらはモニターを必要とせず、相互作用も少なく、キレもよい。しかしコストはまだ高く、そのためワーファリンが使用される場面もある。
DOACの欠点:リバースできない、モニターできない、使い慣れていない。など

現在DOACはたくさんの種類があるものの、どれが1st choiceとして適しているかは不透明である。本試験はDOACとワーファリンについて効果・安全性・コスト面から比較検討した。

<方法>
2010年以降に登録された研究の中から、心房細動患者に対する脳梗塞予防を目的としてDOAC/ビタミンK拮抗薬/抗血小板薬を用いていた、phase2または3の試験
ダビガトラン、アピキサバン、ベトリキサバン、エドキサバン、リバーロキサバンの5つのDOACのどれかと、他の薬を比較している試験を選んだ。
除外:
非経口薬を対象とした試験、同じ薬の用量を変えて比較した試験、追跡期間が3カ月未満の試験、ワルファリンのINR2.0以下の試験など
Main outcome(臨床的重要性、データの多さなどを重視して選択した)
脳梗塞、血栓、虚血性梗塞、出血性梗塞、MI、頭蓋内出血、消化管出血、その他重要な出血
Cost effectiveness70歳から各抗凝固薬を開始したと仮定し、その際にかかる検査などを含めた生涯費用とQALYs、及び各疾患発症率とそれに伴う費用を検討した。
純金銭便益(NMB)2万ポンドに設定した。

<結果>
23件の試験(94656人を登録)が条件を満たした。16試験はphase3、一つは中国語。
患者の年齢:63.381.5歳(中央値は70.0歳)
男性の割合:44.982.9%(63.3%)
脳梗塞歴がある患者:5.063.8%(20.2%)
高血圧患者:38.093.7%(73.8%)
慢性心不全患者:0100%(32%)だった。

ワーファリンと比較した際のオッズ比

脳卒中・塞栓症
総死亡リスク
出血
消化管出血
アピキサバン
5mg 2T2X
0.79
0.88(0.79-0.98)
0.71(0.61-0.81)

ダビガトラン
150mg 2T2X
0.65
0.88(0.77-1.01)

1.52(1.20-1.91)
エドキサバン
60mg 1T1X
0.86
0.86(0.78-0.96)
0.78(0.69-0.93)
1.22(1.01-1.49)
リバロキサバン
20mg 1T1X
0.88
0.83(0.77-1.01)

1.47(1.20-1.81)

 DOAC同士で脳卒中または全身の塞栓症のリスクを比較すると、ダビガトラン150mg2T2Xに対して、エドキサバン60mg1T1Xがオッズ比1.331.02-1.75)、リバロキサバン20mg1T1Xのオッズ比1.351.03-1.78)で、有意なリスク上昇が見られた。DOAC同士の脳梗塞のリスクはどの比較でも有意差を示さなかった。
また、アピキサバン5mg2T2Xと比較した大出血のオッズ比は、タビガトラン150mg2T2X1.331.09-1.62)、リバロキサバン20mg1T1Xでは1.451.19-1.78)になった。エドキサバン60mg1T1Xと比較しても、リバロキサバン20mg1T1Xのオッズ比は1.311.07-1.59)と有意なリスク上昇を示した。

 脳卒中または全身の塞栓症、心筋梗塞、総死亡を含む有効性のランキングでも、大出血と消化管出血の安全性のランキングでも、アピキサバン5mg2T2Xが首位になった。脳卒中または全身塞栓症の予防効果におけるランキングの最下位は、ワーファリンと抗血小板薬だった。

 費用に関する分析では、70歳から治療を開始した場合の生涯コストが最も安かったのはダビガトラン、次がアピキサバン、エドキサバン
QALYsが最も高いのはアピキサバンで、続いてリバロキサバン、ダビガトランだった。閾値を2万ポンドにした場合、増分純便益が最も高いのはアピキサバン5mg2T2Xで、95%信頼区間全体がワーファリンを上回った唯一のDOACだったため、費用対効果が最も高いと判定された。

<考察>
本研究は現在承認されているほとんどのDOACについてその効果・費用面、副作用から序列を検討した最初の研究である。ワーファリンと比較するとほとんどのDOACは最低でも同等であり、特にアピキサバン5mg 2T2Xとエドキサバン60mg 2T2Xは副作用、効果の面からも優れていた。
また、年齢や性別の比率、CHADS2などはeffect modificationとなる明らかな証拠は認められなかった。

Limitation
DOACの直接比較は存在していない
試験デザインの段階で高齢者や合併症を持っている患者などは除外されている可能性が高い。
長期的な副作用は不明。


今後ジェネリックが出ればコスト面でもさらに使いやすくなる。後はDOACが害となる患者の選別やリバース薬の出現がまたれる。

(担当:児玉、まとめ児玉)

2017年12月20日水曜日

Osimertinib in Untreated EGFR-Mutated Advanced Non-Small-Cell Lung Cancer

FLAURA試験の結果をあらためて、まとめてもらいました。
<背景>
NSCLCに対しての治療法の一つがEGFRTKIであり、gefitinib,erlotinib,afatinibなどが現在の日本では使用されている。TKIによる治療は化学療法と比較して明らかにPFSを延長し、6論文のメタアナリシスでは化学療法のPFS 5.6か月に対しTKI使用のPFS11か月となっている。オシメルチニブは第3世代のEGFRTKIでありT790M変異に対して有効であるとされている。AURA試験での好意的な結果により、現在ではEGFRTKI使用後にT790M耐性を獲得した場合の2nd lineとして承認されている。前臨床段階ではオシメルチニブはBBBも通過し脳転移に対しても有効であるとされている。本試験では1st lineとしてオシメルチニブを使用した際の有効性について考察した。


<方法>
二重盲検、phase3試験
対象:NSCLCEGFR major mutation(ex19del, L858R)の患者。
   CNS転移は症状が安定しておりステロイド治療などの全治療は本試験開始2週間前までに完了していること

オシメルチニブ(80mg/day)群と標準的TKI(gefitinib 250mg/dayあるいはerlotinib 150mg/day)に割り付けされた。
EGFR変異および人種(アジア人と非アジア人)はそれぞれ割り付けに際し考慮された

PEPFS期間
SEOSORRresponse期間、DCRdepth of response

CNSに関して、MRIの撮影は必須ではなかった。

<結果>
2014-2016の期間で29か国、132施設から994人が登録された。
その中で279人がオシメルチニブ、277人が標準TKI


Osimerutinib
standardTKI
HR
Median PFS
18.9か月
10.2か月
0.46
Median PFS期間
15.0か月
9.7か月

CNS転移ありのPFS
15.2か月
9.6か月
0.47
CNS転移なしのPFS(無評価含む)
19.1か月
10.9か月
0.46
OS
未到達
未到達
0.67(現時点)
ORR
80%
76%


subgroup解析でも全ての解析群でosimerutinib群が優位となった。

AEに関してはgrade3以上のAEosimerutinib群で34%,標準群で45%であった。osimerutinib群で多かった副作用としては皮疹、下痢、皮膚乾燥などがあった。また、QT延長はosimerutinib群でより多く報告された。

<考察>
本試験FLAURA試験はosimerutinib1st lineとして使用することでPFSの明らかな改善を認めることが示された。そのmedian PFSもこれまでの2世代TKIの報告(ARCHER1050LUX-Lung7など)と比較しても明らかに長く、1st lineとして適していると考えられる。
さらにARCHER1050では除外されている脳転移群に対しても有効であることが示された。

Limitation
無症状CNS転移に関しては評価されていない可能性が排除できない
Afatinibとは比較していない(試験開始時はafatinibはまだ一般的ではなかったため)

<感想>
FLAURA試験を受け、日本でもタグリッソ1st lineが恐らく受け入れられることとなるだろう。Afatinibと比較しても効果は良好であり、副作用が少ないため今後はオシメルチニブが覇権を握ることとなるだろう。OSに関してはimmatureであり正確にはわからないもののKaplan-Myerが早期より分かれており、現時点の見通しとしては恐らく良好な結果が出そうである。
問題としてはosimerutinib failureとなった際にどうするか、afatinib 1st lineosimerutinib 2nd lineと比べどちらが有効性が高いか、などがある。現在osimeru+Bevなど試験も豊富に進んでおり、今後も抗癌剤の変遷は続いていくことになるだろう。

(担当:井部、まとめ:児玉)