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2018年9月26日水曜日

IASLC2018 カナダにて発表(濵元・井部)

カナダ・トロントで開催された世界肺がん学会にて、西埼玉中央病院呼吸器内科より2名発表してきました。秋の感じられるカナダですが、まだ紅葉には少し早い時期でありました。濵元は、ALIと肺がんの生存率について、井部先生は超高齢者への肺がん化学療法の使用成績についての報告をしています。
 発足2年目の西埼玉中央病院呼吸器内科ですが、2名同時に国際学会への発表までできるようになりました。まだ最先端の研究までは出すことできませんが、最先端の医療を提供できるように、日々モチベーションを高めて努力して参ります。
 
CNタワーをバックに井部先生

ポスターセッション
群馬県立がんセンター・茨城県立がんセンター・富山県立中央病院の先生方との食事


 プレナリーセッション
  

ALI could be a one of prognostic survival factor for Non-Small Cell Lung Cancer Patients
 Treatment of Super elderly Patients for Non-Small Cell Lung Cancer in Japan
発表後の食事

 行けなかったナイアガラの滝をバックに!!(ある事情で、列車への乗車拒否)

2018年9月5日水曜日

A Randomized Trial of Itraconazole vs Prednisolone in Acute-Stage Allergic Bronchopulmonary Aspergillosis Complicating Asthma

9月より本年度後半戦のスタートです。児玉先生からの開始です。ABPAヘステロイド治療もしくはITCZどちらがいいのでしょうか?

<背景>
アレルギー性肺アスペルギルス症(ABPA)Aspergillus fumigatusに対する複合的なアレルギー性反応である。世界には推定500万人の患者がいるといわれ、そのうち140万人がインドに集中している。症状としてはコントロール不良な喘息、発熱、喀血などがあり、増悪により気管支拡張・肺線維化が起こる。
現在急性期ABPAに対する治療薬としては糖質コルチコイドが挙げられるが、体重増加・DMなどを始め副作用も多く、代替治療が望まれている。一つの方法として抗真菌薬を使用することが考えられているが、そのランダム化試験は存在しない。我々はイトラコナゾールがPSLと比較して治療効果に劣ると仮定し、本試験をデザインした。

materials and methods
オープンラベル、単施設ランダム化試験

対象:ABPAの定義を満たした患者(喘息、Aspergillus皮膚試験への過剰反応/IgE>0.35IgE>1000を満たし、かつ①血清中A.fumigatus抗体陽性、②画像上の肺透過性低下、③末梢好酸球数>1000、④HRCTでの細気管支拡張、のうち2つを満たしたもの)


除外基準:12か月以内にステロイド・抗真菌薬での加療を行った患者、慢性肺アスペルギルス症・アスペルギローマ・侵襲性肺アスペルギルス症の診断がついている患者
オマリズマブ・免疫抑制剤投与の患者、妊婦

イトラコナゾール群:
200mg 2T2X4か月間経口投与(薬剤濃度は計測していない)
PPIなどの胃粘膜保護剤の内服は禁止された
PSL群:
4週おきに0.5mg/kg/日⇒0.25mg/kg/日⇒0.125mg/kg/
その後は2週おきに5mgずつ減量とした。

喘息に対するICS/LABA、抗ロイコトリエン投与は主治医の指示の下許容された。

PE6週間後の加療反応性(咳嗽・呼吸苦を4ポイントに分け評価)、治療後のIgE低下率、増悪した患者の数
SE:増悪までの期間、呼吸機能の変化、治療関連AE


6週おきに6か月目までXpIgEBS、肝機能を確認し、AEとして緑内障、体重増加、白内障の有無をチェックした。
治療効果として①composite response6週間で咳嗽・呼吸苦の改善、画像上の改善
ABPA増悪を見た。

<結果>
登録者175人のうち131人がランダム化に組み入れられた。
平均のフォローアップは88.9か月であった。全員が喘息治療としてICS/LABAを吸入していた。


PSL
イトラコナゾール群
P
人数
63
68

治療反応あり
63(100%)
60(88%)
0.007
IgE低下率(6)
55%
52%
0.87
IgE低下率(3か月)
67%
66%
0.80
増悪率
13(10.6%)
31(25.2%)

増悪までの期間
437
442


AEは明らかにPSL群の方が高率であった。
肝機能異常はイトラコナゾール群の9(15%)で認めたものの、投与中止はいなかった。

イトラコナゾールに反応ない患者は8人いたが、そのリスク因子は不明であった。この8人は全員がステロイドで加療され、いずれも治療反応を認めた。このうち6人はABPAの増悪を認め、4人はABPAを複数回経験した。

discussion
本試験の結果、ABPAに対してPSLの使用がイトラコナゾール投与より有効であることがわかった。しかし、増悪までの期間・増悪率に関しては、イトラコナゾールに全く反応しなかった8人を除けば両群でほぼ変わりなかった。更に重要なことに、副作用の出現に限ればイトラコナゾール群は明らかにPSL群に勝った。
本来の理想とする試験デザインはPSL群、イトラコナゾール群、コンビネーション群の3群であったが、目的がイトラコナゾール群単剤治療での効果であり、これまでの報告から単剤でもPSL暴露の必要性が薄いと考えられたため2群での試験となった。
イトラコナゾール群は15%程度に肝機能障害が出現したものの加療中止までは至らず、それ以外の副作用はほぼ認めなかった。
(4か月で治療中止としたのは耐性菌の出現を減らすため)
PSL群は明らかにイトラコナゾール群よりも優れた結果となったが、裏を返せば88%には有効であった。また、治療不良の8人以外はすべてPSLとほぼ同様の効果を呈した。急性ABPAに対し、特にDMや骨粗鬆症、肥満などのリスク因子がある患者に対してはイトラコナゾールが有効であると考えられた。理想的にはTDMを行った上での使用が望ましい。

Limitation
・単施設研究
・非盲検試験であり、selection biasの可能性がある
・咳嗽、呼吸苦に関しては主観的な評価であり、客観性にかける
TDMを行っていない(反応のなかった8人では低濃度であった可能性がある)

結論としては、ABPAに対してのPSL投与はイトラコナゾール内服よりも有効である反面、イトラコナゾール自体もPSLより副作用は少なく、十分使用に値すると考えられた。
今後PSL投与期間の短縮や、イトラコナゾール併用なども検討の必要があるだろう。