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2018年9月5日水曜日

A Randomized Trial of Itraconazole vs Prednisolone in Acute-Stage Allergic Bronchopulmonary Aspergillosis Complicating Asthma

9月より本年度後半戦のスタートです。児玉先生からの開始です。ABPAヘステロイド治療もしくはITCZどちらがいいのでしょうか?

<背景>
アレルギー性肺アスペルギルス症(ABPA)Aspergillus fumigatusに対する複合的なアレルギー性反応である。世界には推定500万人の患者がいるといわれ、そのうち140万人がインドに集中している。症状としてはコントロール不良な喘息、発熱、喀血などがあり、増悪により気管支拡張・肺線維化が起こる。
現在急性期ABPAに対する治療薬としては糖質コルチコイドが挙げられるが、体重増加・DMなどを始め副作用も多く、代替治療が望まれている。一つの方法として抗真菌薬を使用することが考えられているが、そのランダム化試験は存在しない。我々はイトラコナゾールがPSLと比較して治療効果に劣ると仮定し、本試験をデザインした。

materials and methods
オープンラベル、単施設ランダム化試験

対象:ABPAの定義を満たした患者(喘息、Aspergillus皮膚試験への過剰反応/IgE>0.35IgE>1000を満たし、かつ①血清中A.fumigatus抗体陽性、②画像上の肺透過性低下、③末梢好酸球数>1000、④HRCTでの細気管支拡張、のうち2つを満たしたもの)


除外基準:12か月以内にステロイド・抗真菌薬での加療を行った患者、慢性肺アスペルギルス症・アスペルギローマ・侵襲性肺アスペルギルス症の診断がついている患者
オマリズマブ・免疫抑制剤投与の患者、妊婦

イトラコナゾール群:
200mg 2T2X4か月間経口投与(薬剤濃度は計測していない)
PPIなどの胃粘膜保護剤の内服は禁止された
PSL群:
4週おきに0.5mg/kg/日⇒0.25mg/kg/日⇒0.125mg/kg/
その後は2週おきに5mgずつ減量とした。

喘息に対するICS/LABA、抗ロイコトリエン投与は主治医の指示の下許容された。

PE6週間後の加療反応性(咳嗽・呼吸苦を4ポイントに分け評価)、治療後のIgE低下率、増悪した患者の数
SE:増悪までの期間、呼吸機能の変化、治療関連AE


6週おきに6か月目までXpIgEBS、肝機能を確認し、AEとして緑内障、体重増加、白内障の有無をチェックした。
治療効果として①composite response6週間で咳嗽・呼吸苦の改善、画像上の改善
ABPA増悪を見た。

<結果>
登録者175人のうち131人がランダム化に組み入れられた。
平均のフォローアップは88.9か月であった。全員が喘息治療としてICS/LABAを吸入していた。


PSL
イトラコナゾール群
P
人数
63
68

治療反応あり
63(100%)
60(88%)
0.007
IgE低下率(6)
55%
52%
0.87
IgE低下率(3か月)
67%
66%
0.80
増悪率
13(10.6%)
31(25.2%)

増悪までの期間
437
442


AEは明らかにPSL群の方が高率であった。
肝機能異常はイトラコナゾール群の9(15%)で認めたものの、投与中止はいなかった。

イトラコナゾールに反応ない患者は8人いたが、そのリスク因子は不明であった。この8人は全員がステロイドで加療され、いずれも治療反応を認めた。このうち6人はABPAの増悪を認め、4人はABPAを複数回経験した。

discussion
本試験の結果、ABPAに対してPSLの使用がイトラコナゾール投与より有効であることがわかった。しかし、増悪までの期間・増悪率に関しては、イトラコナゾールに全く反応しなかった8人を除けば両群でほぼ変わりなかった。更に重要なことに、副作用の出現に限ればイトラコナゾール群は明らかにPSL群に勝った。
本来の理想とする試験デザインはPSL群、イトラコナゾール群、コンビネーション群の3群であったが、目的がイトラコナゾール群単剤治療での効果であり、これまでの報告から単剤でもPSL暴露の必要性が薄いと考えられたため2群での試験となった。
イトラコナゾール群は15%程度に肝機能障害が出現したものの加療中止までは至らず、それ以外の副作用はほぼ認めなかった。
(4か月で治療中止としたのは耐性菌の出現を減らすため)
PSL群は明らかにイトラコナゾール群よりも優れた結果となったが、裏を返せば88%には有効であった。また、治療不良の8人以外はすべてPSLとほぼ同様の効果を呈した。急性ABPAに対し、特にDMや骨粗鬆症、肥満などのリスク因子がある患者に対してはイトラコナゾールが有効であると考えられた。理想的にはTDMを行った上での使用が望ましい。

Limitation
・単施設研究
・非盲検試験であり、selection biasの可能性がある
・咳嗽、呼吸苦に関しては主観的な評価であり、客観性にかける
TDMを行っていない(反応のなかった8人では低濃度であった可能性がある)

結論としては、ABPAに対してのPSL投与はイトラコナゾール内服よりも有効である反面、イトラコナゾール自体もPSLより副作用は少なく、十分使用に値すると考えられた。
今後PSL投与期間の短縮や、イトラコナゾール併用なども検討の必要があるだろう。


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