カウンター

2019年7月31日水曜日

Follow-up Blood Cultures in Gram-Negative Bacteremia: Are They Needed?

本日のJournal Clubは薬剤部実習生髙野さん(慶應大学)が、「グラム陰性菌陽性の敗血症でフォローアップの血液培養が必要かどうか」について、一昨年Cliniacl Infectious Diseasesに掲載の論文を紹介して下さいました。

【抄読会での主な討論】
  コンタミ以外で血液培養フォローしなくて良いと日本ではなかなか言えない。
  感染源がはっきりしているケース(静脈ルート感染、尿カテ感染)などでは、たしかに物理的な原因除去で改善が見込めるということが言いたいのでは。
  一回目の血液培養で薬剤耐性もはっきりして、抗生剤が当たっているのなら、フォローが必要なさそうではあるけれど。
  実際に感染性心内膜炎(IE)などでは、GNRではフォローが必要ないともいえる。
  グラム陽性球菌ではIEなどもふくめて考えれば、この結果とは真逆で、フォローこそ大事だろう。
(まとめ:呼吸器・石井)

【目的と方法】
血流感染症は、依然として罹患および死亡の主因である。グラム陰性桿菌(GNB)菌血症は一過性であることが多く、通常では適切な抗菌薬療法と感染源制御の開始後に、迅速に消失する。治療の至適期間および経過観察の血液培養(FUBC)の有用性については、詳細には検討されていない。現在では、グラム陰性菌血症の管理方法は主治医らの臨床的判断によって決定されている。繰り返し行う血液培養の有用性について検討するために、500件の菌血症エピソードについて分析し、FUBCの実施頻度を明らかにするとともに、持続性菌血症の危険因子を特定した。500件の菌血症エピソードのうち、1回以上FUBCが行われた383件(77%)についてコホート的に分析した。菌血症の推定された感染源、FUBC時の抗菌薬の状況、抗菌薬感受性、発熱の有無、併存疾患(中心静脈ライン、尿道カテーテル、糖尿病、AIDS、末期腎不全、肝硬変)、集中治療の必要性、および死亡に関する情報を収集した。 
【結果と結論】
抗菌薬の使用は、細菌が経験的抗菌薬に感受性を示さなかった場合を除いては、FUBCの陽性率に影響を及ぼさなかった。FUBC実施日の発熱は、グラム陽性球菌(GPC)ではFUBCの高い陽性率と関連していたが、グラム陰性菌では関連していなかった。死亡および集中治療室での治療は、FUBC陽性とは関連していなかった。GNBの再陽性の率は低く、1件の陽性結果を得るために、GNBではFUBC17回、GPCではFUBC5回行う必要があった。血液培養のフォローは、GNB菌血症の管理において、ほとんど役立っていなかった。血液培養のフォローをしすぎることは、患者に対して、医療費の増加、入院の延長、不必要な他科へのコンサルテーション、抗菌薬の不適切な使用などの重大な影響をもたらしていると言える。


2019年7月25日木曜日

Association of Household Income With Life Expectancy and Cause-Specific Mortality in Norway, 2005-2015.

本日のJournal Clubは初期臨床研修医の和田悠佑さんが、「社会保障制度の整っているノルウェーにおける平均寿命と死因が世帯収入においてどのように関係しているか」について、本年5月13JAMA Original Investigation掲載の論文を紹介してくれました。

【抄読会での主な討論】
・ 世帯所得が大きくなることは経済的な有利性に加えて、病院受診や救急対応へのアクセスが身近なものになっている。
  物質使用障害(アルコー ル・喫煙・覚せい剤・オピオイドなどの薬物依存)や自殺は低所得者になるにつれ身近な存在となる
  一昔前では富裕は食生活が豊かになる分、肥満をはじめとする生活習慣病に罹患する数が多かったが、今日では健康教育のおかげでその数が修正されていることは予想外であった。
  ここまで大規模な調査はなかなかできるものではないが、それでも世帯間の収入の差を正確に比較することは難しく、その点においてはより詳細なデータが必要なことが今後の課題となる。
(担当:和田、まとめ:呼吸器・石井)


【目的と方法】
 この調査の目的は2005~2015年の間に社会医療が高度に発達しているノルウェーでの収入格差が平均余命と死因とどのように関連しているか、そしてその差はアメリカと比較してどうなっているかを調査することにあ
本研究の4つの目的は,(1)収入による40歳代の平均寿命の差を見積もること,(2)収入による平均寿命の傾向を 調査すること,(3)平均寿命と米国での平均寿命と死亡原因を比較すること。
解析には40歳以上の304万1828例が含まれ、調査対象の期間中に44万1768例が死亡しました。解析時の平 均年齢は59.3歳(SD 13.6)、一人当たりの平均世帯人数は2.5人(SD 1.3)であった40歳以上とした理由については子供や若年層の世帯所得は成人の生涯所得を反映していないことがあげられる。
またあらかじめ最も所得の低い集団3%は所得がマイナス、またはゼロの個人、未登録の源泉所得,移民など が含まれており、これら下位3%は除外して調査された
移民の中には,死亡前に住民登録簿を届けずに原産国に戻ってくる者もおり,世帯所得が足りない人の70%以 上が移民の経歴を持っていることが分かっている。このため,ノルウェーで生まれなかった人や,ノルウェーで生まれた両親がいない人は,一次研究の対象から除外された。
【結果と結論】
 2011~15年のノルウェーの平均寿命は、所得が最も高い1%の女性が最も長86.4歳、所得が最も低い1%の女性78.0歳8.4年の差があった男性では所得が最も低い1%の男性の平均寿命が最も短70.6歳、最も高所得の1%の男性84.4歳でその差は13.8年だった。
 平均寿命の差に大きく寄与した死因は、高齢者では循環器疾患、がん、慢性閉塞性肺疾患、認知症であり、若年者では薬物使用による死亡と自殺であった。
 この期間に、所得上位25%の女性の平均寿命が3.2年延長したのに対し、所得下位 25%の女性は0.4年短縮した。男性では所得上位25%が3.1年、下位25%は0.9 年延長した。
アメリカとの比較では、ノルウェーは男女とも低~中所得層の平均寿命が長かった点を除けば、所得別の平均寿命の差の傾向はアメリカと類似していた。
結論として、平均寿命の点で最も大きな違いが認められたのは、低~中所得者の間で、ノルウェーではこの層の平均寿命がアメリカよりも長かった。
類似点としては両国とも高所得層であるほど平均寿命の延長が見受けられた。特に循環器系疾患においてはその差は大きかった。