本日のJournal Clubは薬剤部実習生髙野さん(慶應大学)が、「非扁平上皮非小細胞肺癌に対する化学療法とアテゾリズマブの併用療法(IMpower130)」について、本年5月20日The Lancet
Oncology掲載の論文を紹介して下さいました。
【抄読会での主な討論】
・ KeyNote189(キイトルーダとペメトレキセド/プラチナ製剤併用)と比較すると完全に見劣りする内容であるのは否めない。
・ そもそも、腺癌であるのに、ICIの効果を高める可能性があるアリムタ(ペメトレキセド)をこのレジメンでは使わないことに違和感が生じてしまう。
・ 数億円を使った以上、ロシュ(製薬会社)的にも発表せざるを得ないのがこのIMpower130なのだろう。
・ ただし、EGFR/ALK陽性例のIMpower150と併せると、テセントリクはキイトルーダと同様に無視はできない存在感がある。この点では、オプジーボの肺がんの分野での生き残りは厳しいと言える。従来の悪性黒色腫などの分野でやっていくのだろう。
(まとめ:呼吸器・石井)
【目的と方法】
アテゾリズマブ(PD-L1モノクローナル抗体)は既治療非小細胞肺癌における全生存を改善し、1次治療において化学療法と併用することで臨床的な利益をもたらすことが示されている。今回のIMpower130試験は、非扁平上皮非小細胞肺癌の1次治療として、化学療法にアテゾリズマブ併用する群を化学療法単独治療群を(2:1で盲検化して)比較し、効果と安全性を評価したものである。 IMpower130試験はランダム化オープンラベル第3相試験で、8ヶ国(アメリカ、カナダ、ベルギー、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、イスラエル)の131施設でおこなわれた。適格基準は、18歳以上で、組織学的あるいは細胞診で病期IVの非扁平上皮非小細胞肺癌と診断され、ECOG PSが0-1で、過去に化学療法を受けていない患者とした。患者はランダムに2:1の割合で、カルボプラチン+ナブパクリタキセル+アテゾリズマブあるいはカルボプラチン+ナブパクリタキセルのいずれかの群に割り付けられた。4-6サイクルの後、維持療法へ移行した。性別、ベースラインの肝転移、PD-L1発現によって層別化された。複合プライマリエンドポイントとして、ドライバー遺伝子野生型のITT集団における無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を設定した。安全性解析は少なくとも1回以上治療薬が投与された場合に評価された。
【結果と結論】
2015年4月16日から2017年2月13日までの間に、724人の患者がランダムに割り付けられ、化学療法+アテゾリズマブ群483人(うち451人がEGFR陰性の野生型集団)、化学療法群240人(うち228人がEGFR陰性の野生型集団)となった。ITT野生型集団における追跡期間中央期間は両群同等だった(化学療法+アテゾリズマブ群18.5ヶ月 vs 化学療法群19.2ヶ月)。ITT野生型集団において、OS中央値は有意に化学療法+アテゾリズマブ群のほうが4ヶ月程度長かった(18.6ヶ月 vs 13.9ヶ月、層別化ハザード比0.79[95%信頼区間0.64-0.98]、p=0.033)。肝転移例では両群に有意差がなかった。
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