カウンター

2020年1月8日水曜日

Metoprolol for the Prevention of Acute Exacerbations of COPD.

本日のJournal Clubは呼吸器濵元先生が、2019年10月にNEJM掲載の最新論文、「COPD の急性増悪の予防のためのメトプロロール;Metoprolol for the Prevention of Acute Exacerbations of COPD」を紹介しました。

【抄読会での主な討論】
・そもそも,いくらβ1選択性が高いからといって、βブロッカーをCOPDに使って気道狭窄のリスクなどが考慮されていない。循環器科医のアイデアであろうか?
・多くのCOPDは心不全の病態を合併しており、その点で心不全の治療薬を使ってのCOPDの治療はどうかというかなり強引な仮説を元に行われた試験である。N1000も集めてやる試験ではないではないか?
・国防省のファンドを得た研究とか、その辺の何か政治的なものがありきと疑ってしまう。
・半減期の点であるが、βブロッカーの中でもあえてメトプロロールのような薬剤を使っている点も何か不思議な研究である。
・循環器の造影検査などで使用のほか、メトプロロールを当院で使うことはほぼない現状もある。
(担当:濵元、まとめ:石井)
【目的と方法】
背景として,β遮断薬は,中等度または重度の慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の増悪と死亡のリスクを低下させる可能性があることが複数の観察研究から示唆されているが,それらの知見は無作為化試験では確認されていない.このため,前向き無作為化試験で,4085 歳の COPD 患者をβ遮断薬(徐放性メトプロロール)群とプラセボ群に割り付けた.全例が COPD の臨床病歴とともに,中等度の気流制限と高い増悪リスクを有していた.高い増悪リスクは過去 1 年間の増悪歴または在宅酸素療法の処方・使用歴があることで示された.β遮断薬の投与をすでに受けている患者,β遮断薬使用の確立された適応がある患者は除外した.主要評価項目は,投与期間中の COPD の初回増悪までの期間とした.投与期間はメトプロロールの用量調節に応じて 336350 日であった.

【結果と結論】
532 例が無作為化された.患者の平均(±SD)年齢は 65.0±7.8 歳であり,平均 1 秒量(FEV1)は予測値の 41.1±16.3%であった.試験は,主要評価項目に関する無益性と安全性の懸念のため早期に中止された.初回増悪までの期間の中央値はメトプロロール群 202 日,プラセボ群 222 日で,群間に有意差は認められなかった(メトプロロールのプラセボに対するハザード比 1.0595%信頼区間 [CI] 0.841.32P0.66).メトプロロールは,入院にいたる増悪のリスクがより高いことに関連していた(ハザード比 1.9195% CI 1.292.83).メトプロロールに関連する可能性のある副作用の発現頻度は 2 群で同程度であり,呼吸器以外の重篤な有害事象の全体的な発現率も 2 群で同程度であった.投与期間中に,死亡はメトプロロール群で 11 例,プラセボ群で 5 例あった.中等度または重度の COPD を有し,β遮断薬使用の確立された適応がない患者において,初回 COPD 増悪までの期間はメトプロロール群とプラセボ群で同程度であった.増悪による入院は,メトプロロールの投与を受けた患者のほうが多かった.Limitetionsとしては,軽症のCOPDを含まないこと、研究が途中で中断されたため,時間的にも患者数の面でも十分な量的考察を含まないことなど.(米国国防総省から研究助成を受けた.BLOCK COPD 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02587351