《背景》
アメリカでは1年に150万人が敗血症をきたすとされ、その多くはERに搬送されることとなる。治療方法としては前臨床試験の結果、早期の広域抗菌薬投与・点滴投与などが一般的とされているがその具体的な予後改善効果については知られておらず、臨床医によってはその利益に疑問を呈するものもいる。こういった背景より、今回我々は治療介入のタイミングとその死亡リスクの関係について調査した。
《方法》
対象:NY州の計149施設で17歳以上の49,331人の敗血症/敗血症ショック患者
市中感染症のみを対象とするため、入院後6時間以内に敗血症プロトコルを開始した患者のみが対象となった。
原則的にニューヨーク保健部にて作成されたプロトコルに則り治療された。具体的には3hour bundle(3時間以内の広域抗菌薬投与、血液培養採取、lac測定)を行うことが求められた。
除外:その他臨床試験に登録されている患者、治療拒否患者、登録患者50例未満の病院からの患者(疑似症例の除外のため)
全ての施設は患者の概要、合併症、病状、重症度、プロトコル完遂までに要した時間、結果を報告することとされた。
・敗血症の診断基準としてはSepsis-2(2001 International Sepsis Definitions Conference)を基に行われた(Sepsis-3は本試験開始後に出されたため定義としていない)
Primary Outcome:院内死亡率
Primary Exposure:3hour bundle完了までの時間
補液のbolus投与に関しては30ml/kgの膠質液投与がすべて投与されるまでの時間を観察した。投与された患者は全員Lac>4mmol、sBP<90mmHgの患者にかふぃられた。
《結果》
49331人の患者のうち82.5%は3時間以内に3hours bundleを施行完了していた(中央値は1.30時間)。3時間以内に完了された患者とそれ以外では患者背景はほぼ変わらなかった。
3hour bundleを完了した時間は死亡率の高さと関連した(3-12時間で完了した患者は、3時間以内に完了した患者と比較して院内死亡率が14%上昇した)。抗菌薬投与までにかかった時間も同様の結果となった。
26978人の患者は入院12時間以内にbolus投与を受けることとなったが、その投与までの時間と院内死亡率は相関しなかった。
《考察》
今回の結果で敗血症患者への治療介入時間と予後が挿管することが改めて示された。
しかしbolus投与までの時間は予後とは関連しなかった。これは、重症な患者ほどbolus投与の時間が短くなる傾向があるため、死亡リスクも高くなると考えることができるため、一概にbolus投与に意味がないとは言えない。Bolus投与により肺水腫などの副作用が出ることもあり、これについてはランダム化試験による試験が必要である。
病院間での3hour bundleの尊寿率、bolus投与施行率などは大きな差があった。特に小規模な大学病院などの教育機関付属病院でない病院の方がアドヒアランスは良好であり、意識の共有がより計られやすいことが影響していると考えられた。
Limitation:ランダム化試験ではないこと。広域抗生剤の使用の妥当性についてのデータがない点などがある。
《感想》
敗血症ショックに対する加療スピードが予後とどう関係するかを報告している。
この研究では3hour bundleとしてlactate、血培、抗菌薬投与をセット換算としているが、Fig3にある様に抗菌薬投与までの時間/3hr bundleが施行された時間と死亡率のグラフを比較するとほぼ変わりがないことが分かる。極論抗菌薬さえ早く入れられればそれだけで死亡率はコントロールできることが分かる。
客観的に考えれば至極当然な結論だがそれが出来ていない病院が多い事も本文で触れられている。基本に忠実に医療をしていく事が重要であると再認識させられた。
(担当:感染Ns.坂木、まとめ:児玉)
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