PD-1/PD-L1阻害剤が開発されてから、そのNSCLCに対する臨床効果の高さが注目されている。
しかしT細胞の活動性を増加させることによる自己免疫疾患関連副作用
(irAE)も報告されており、肺臓炎もその一つとしてNSCLC患者の4%程度の割合で起こることが知られている。
これまでの報告ではPD-1とPD-L1で肺臓炎をきたす確立が異なることを指摘されている一方、そのsystemic reviewやメタアナリシスはまだ報告がない。
この事から今回我々はて肺臓炎を起こす確立と使用する薬剤についてのメタアナリシス調査を行った。
<方法>
対象:Medline, EmbaseとScopusに登録されている論文で nivolumab, pembrolizumab, atezolizumab, durvalumab, avelumabの5種類のPD-1/PD-L1阻害剤について報告した試験を確認し、その副作用(全G,G3以上)をきたした確立を調査した。
使用した論文は
①
NSCLCに対しPD-1/PD-L1阻害薬を使用している単アームないしランダム化試験
②
CTCAE gradeに沿った肺臓炎の評価を行っている
③
その他と併用した比較試験では単剤のみ使用した群についてのみ
とした。
目標:chemo-naïve患者と2nd以降でのirAE発症率の違い、使用する薬剤によるirAE発症の違いを調査する。
<結果>
最終的に19試験計5038名にてメタアナリシスを行った。
<内訳>
・PD-1: 12例 (nivolumab 9例、pembrolizumab 3例)
・PD-L1: 7例 (atezolizumab 5例、durvalumab,avelumab各1例)
・phase1 6例、phase2 6例、phase3 7例
・単アーム 13例、ランダム化試験6例
PD-1
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PD-L1
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P値
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全G肺臓炎
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3.6%
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1.3%
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0.001
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G3以上の肺臓炎
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1.1%
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0.4%
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0.02
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※nivolumabとpembrolizumabでは肺臓炎をきたす頻度に明らかな差はなかった。
Chemo-naive
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Previously-treated
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P値
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全G肺臓炎
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4.3%
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2.8%
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0.03
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G3以上の肺臓炎
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0.5%
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1%
|
0.1
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※PD-1とPD-L1でchemo-naïveに対する肺臓炎の頻度に差はなかった。
<考察>
PD-1はPD-L1と比較して全G、G3以上の肺臓炎の頻度がいずれも高値であった。
またearly lineでの使用は全Gの肺臓炎をきたす確立が高値であった一方G3以上に限ると優位な差は認めなかった。
肺臓炎による治療関連死は計7例認められ、いずれもPD-1抗体使用例であった。この7例は治療期間・量などには関連性がなかったものの、6/7人が過去に喫煙者であり、3/7人に照射歴があった。
Early lineやPD-1で肺臓炎が増加する理由や、smokerでの致死率が高いことなどの原因は不明であり、様々な複合的要因が絡んでいると推測できる。
Limitation
Open-label試験が多く、肺臓炎の症例報告においてバイアスがかかる可能性は高い。しかしIPや肺炎などはこのメタアナリシスでは除外しており、そのバイアス自体は極端なものではないだろう。
<感想>
irAEについてのメタアナリシスであり、様々なバイアスの可能性はあるもののPD-1 > PD-L1のirAEを報告している。
Chemo-naïveな患者に対してのAEが比較的高値である点は、PD-1を可能な限りearly lineで投与したいという現状の認識とは相反する。考え方としてはearly line時はリスク因子を同定しながら予防的加療、厳重なフォローを行うこととなるだろう。
また、本論からだとある程度のリスク因子(例えば言及されているように放射線照射歴や喫煙歴など)がある場合はPD-L1を使用した方がよいと考えることができる。現時点ではatezolizumabは臨床まで至っておらず、仮に効果がPD-1と同等であれば当然リスク回避目的にatezolizumabを使用していくこととなるかもしれない。今後のatezolizumabの結果が待たれる。
(担当;薬剤科福田、まとめ:児玉)
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