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2017年6月28日水曜日

Previous radiotherapy and the clinical activity and toxicity of pembrolizumab in the treatment of non-small-cell lung cancer: a secondary analysis of the KEYNOTE-001 phase 1 trial


<背景>
PD-1抗体、PD-L1抗体の治療により予後は目覚ましいものとなったが、一方で17-19%程度の人にしか反応がないことが分かっており、non-responderresponderとする方法の解明が必要な状態である。
これまでの基礎的な報告では局所放射線療法により免疫療法への反応を刺激することが分かっている。今回はKEYNOTE001試験を基にペンブロリズマブ投与前に放射線療法を受けた患者の病状コントロールと肺障害の評価を行った。

<方法>KEYNOTE001試験の進行性NSCLC患者に対し、PFSOSから治療前放射線照射の効果を評価した。更に、治療前胸部照射とペンブロリズマブ投与の加療の肺毒性についても評価を行った。

登録患者:18歳以上、advanced NSCLCPS0-1、臓器障害のない患者。
除外基準:IPの既往、全身性免疫抑制療法、activeな自己免疫疾患の既往あるもの。

※PD-L1抗体の表現はPD-L1>1%を陽性としている。

【投与方法】
Pembrolizumab2mg/kgあるいは10mg/kg3週ごと、あるいは10mg/kg2週ごとに投与した。AE出現時の基準に沿った減量は認められた。
PD、強い毒性、あるいはその他継続不能な理由が出来るまで投与継続した。

【評価】
放射線照射群とそれ以外、および頭蓋外照射群とそれ以外に分け、PFS,OS,肺毒性に影響を与えるかを評価した。
AEについては治療サイクル毎のday1と、最終投与30日後のフォロー時に評価した。
CTあるいはMRI9週ごとに撮影され、irRCを元にPDを評価した。

<結果>
98人の患者が登録された。うち1名は途中転院があり、97人が今回の研究に登録されている。

【投与量内訳】
9人   2mg/kg/2w
35人   10mg/kg/2w
53人   10mg/kg/3w

【照射】
42/97人に放射線療法既往あり
うち38/97人に頭蓋外病変照射歴あり
24/97人に胸部放射線照射歴あり
1 course目投与の9.5か月前(中央値)に照射していた。同時に行った例はなし。

全患者のPFS2.1か月、6か月生存率は33.7%だった。

All radiation
No radiation
Hazard Ratio
80PD後のPD人数
31
49

PFS
4.4か月
2.1か月
0.56
6か月PFS
49%
23%

OS
10.7か月
5.3か月
0.58
6か月OS
73%
45%



Extracranial R
No extracranial R
Hazard Ratio
80PD後のPD人数
27
53

PFS
6.3か月
2.0か月
0.50
6か月生存率
54%
21%

OS
11.6か月
5.3か月
0.59
6か月OS
75%
45%


PFSに影響する因子としては、年齢・喫煙・PS・頭蓋外照射が該当した。
一方で治療line、診断までの期間、性別、病理、診断時病期分類などは関係なかった。

【副作用】
Gの肺毒性        :44/97(45%)
胸部照射歴のあるPtの肺障害:15/24(63%)
照射歴なしのPtの肺障害  :29/73(40%)
照射群の方がAEを起こす可能性は高かったものの、G3以上のAEに関しては照射群とそれ以外で差はなかった。

OS中央値:32.5か月だった。
死因としては腫瘍の進展が66人、4人が呼吸不全、3人が不明、2人が感染症、1人がDAD、気胸が1人、医原性の消化管穿孔が1人、PTE1名。全て照射・治療とは関係ないと結論付けられた。

discussion
・特に照射群では照射なし群と比較すると高PD-L1患者が少ないにもかかわらず、明らかに良好なPFSを誇っていた。
もしかするとnon-responderresponderへとconvertするポテンシャルを持っているかもしれない。
・照射とペンブロリズマブの併用は臨床的には許容範囲内であり問題ないと考えられるが、AEに関してはきちんと見ていく必要がある。

Limitation
Keynote001から持ってきた患者であり、baselineの違いはある。
特に照射された患者はline数が多く、診断から投与までの期間が長く、照射群の方が相対的により未熟な腫瘍であった可能性も考えられる。しかしsubgroup解析では期間とline数はPFSに寄与していないとの結果であり、PFSが良好だったのは少なからず放射線照射によるところがあるだろう。
・放射線照射の量・回数・照射部位についての情報は得ることができなかった。また、単施設研究となっているため、施設バイアスの否定はできない。

<感想>
KEYNOTE021,KEYNOTE189,KEYNOTE407試験を始めとした免疫療法+化学療法併用試験は多く報告されており、今後も免疫療法+その他療法との併用使用は議論の中心となっていく事が濃厚である。
今回はその一つである照射+免疫療法のいわゆる「アブスコパル効果」に関しての報告。局所治療である放射線治療により、照射部位とは別部位にも腫瘍縮小効果があるというアブスコパル効果は50年以上前から知られているものの、あくまで基礎での報告が主軸であり、少なくとも呼吸期領域では実際の効果としてははっきりしていない。本報告は臨床にて優位な差が出た興味深い内容だった。
これを踏まえれば、例えば姑息照射の比較的多いsmall患者への免疫療法が使用可能になった際はかなり期待できる結果となるかもしれない。一方で、例えば予防的WBRTのような腫瘍細胞数個といったレベルでも効果があるのか、あるいはある程度のmassがあるところに照射が必要なのかなどまだわからないことは多く、今後の詳細が待たれる状態である。ただ、本報告のPFS,OSの結果を見ると80%程度いるPD-L1陰性患者への治療法としては、今後希望となっていくかもしれない。
(担当:児玉、まとめ:児玉)

【抄読会担当者 2017年7月】

【抄読会担当者 2017年7月】
     2017年7月5日 :薬剤科 石塚 栞(薬学学生)
     2017年7月12日  :感染管理 坂木
     2017年7月19日  :呼吸器科 濵元→薬剤科 福田
     2017年7月26日   :呼吸器科 井部→呼吸器科 濵元
                     (2017/6/28変更)
      順番は、適宜相談にて変更いたします。都合悪い場合は、ご連絡ください。

2017年6月21日水曜日

Alectinib versus Crizotinib in Untreated ALK-Positive Non–Small-Cell Lung Cancer


<背景>現在ALK陽性NSCLCに対してはクリゾチニブが第1選択薬(median PFS 10.9か月)となっている。一方、ALK陽性患者はCNS転移が多いことで知られており、CNS再発は最もよく見られるPDのタイプの一つである。
アレクチニブはALKに対する高選択性の阻害剤であり、全身性・更にCNSにも効果のある第2世代ALK阻害剤である。
BBBにおいて P-glycoproteinP-gp)を介した薬剤排泄システムが存在しているが、アレクチニブはP-gpに基質としてほとんど認識されず,このシステムによる血中への排泄がほとんどないことが in vitro 試験で認められている。臨床的にもアレクチニブのCNSに対する効果が認められている。
今回、chemo-naiveALK陽性NSCLCに対し、第1世代ALK阻害剤であるクリゾチニブとアレクチニブとを比較した。
<方法>
Open labelphase 3試験であり、未治療、ALK陽性NSCLC患者303(98施設)が登録された。対象は1:1にアレクチニブ600mg 12回かクリゾチニブ250mg 12回投与された。
ランダム化に関してはPS、人種、CNS転移を念頭に行われている。MRIによる画像撮影を8週ごとに行い、評価の基準としている。また、Crossoverは、承認されている国に関しては承認されたが、それ以外は許容していない。

対象:18歳以上、PS0-2、未治療のALK陽性患者。無症候性の脳転移は許容された。
放射線照射歴に関しては登録14日前までに完了していれば可とした。
PE:主治医評価のPFS
SE:第3者機関のPFSCNS PDまでの期間、ORROS

<結果>
PD、ないし死亡した患者はアレクチニブ41%(62/152)に対し68%(102/151)と大きく差がついた。第3者機関でのPFSでもアレクチニブのほうが圧倒的に高く(アレクチニブ68.4% vs クリゾチニブ48.7%)Hazard Ratio0.47であった。
その他結果は以下の通り。
ORR
  アレクチニブ 82.9% vs クリゾチニブ 75.5%
CNS progression
 アレクチニブ12%   vs クリゾチニブ 45%
CNSへのCR
アレクチニブ8(38%) vs クリゾチニブ 1(5%)
CNS responseの中央値
  アレクチニブ 17.3か月  vs  クリゾチニブ 5.5か月
計測困難なCNS(髄膜肥厚など)への効果
  アレクチニブ 59%    vs   クリゾチニブ 26%
計測困難なCNS(髄膜肥厚など)CR
アレクチニブ 59%    vs   クリゾチニブ5%
G3-5 AE
  アレクチニブ 41% vs クリゾチニブ 50%
 特にクリゾチニブでは嘔気、下痢などの消化器症状が多く、アレクチニブでは血中ビリルビン上昇、筋肉痛、貧血、光線過敏などのAEが多かった。
死亡はアレクチニブ3%、クリゾチニブ5%とほぼ変わりなかった。治療関連死亡はクリゾチニブで2人のみであった。

PFSの中央値はアレクチニブで評価不能に対し、クリゾチニブ 11.1か月
OSの中央値は両者ともに評価不能であった。

subgroup解析では喫煙者とPS2でほぼ同等の結果となっており、それ以外はいずれもアレクチニブが優位となった。しかし喫煙、PS2に関してはmassが少なく正確な評価とは言えない。

<考察>
2世代アレクチニブと第1世代クリゾチニブのhead-to-headの試験である。
元々ROSをターゲットに開発されたクリゾチニブはMETROSに対してもキナーゼ阻害活性を持つ多分子標的薬である。それに対しアレクチニブは ALK の酵素活性に対するより高選択な阻害効果が報告されている薬剤である。
今回は高選択性なアレクチニブの有効性が存分に発揮された結果となった。同様の研究は日本人のみでも行われており(J-ALEX試験)、これも非常に良い結果が出ている。
アレクチニブのPFSが良好であることは以前から知られているが、OSがどうなるかはALK阻害剤の効果が高いこともあり、まだ不明である。しかし恐らくアレクチニブのほうが良い結果となることが推測される。
現状のガイドラインでは1st lineクリゾチニブとなっているが、今回の報告、およびJ-ALEX試験の結果を見ると近いうちに1st line アレクチニブとなっていくことは確実である。となると今後クリゾチニブを使用する状況としては、アレクチニブfailureに対する2nd lineROS変異に対してなどになると思われる。上記の通りクリゾチニブのほうが「よりブロードな」効果があることを考えると、2nd lineとして使用することでPFSの延長効果は多少なりともある可能性がある。これについては今後の報告待ちとなるだろう。
今後も新ALK阻害剤(brigatinibLorlatinib)が控えていることもあり、本報告のOS結果が出るころには話題が他に移っている可能性もありうる。しかし、PFSORRCNSへの効果、AEいずれもがこれほどまでによい結果となっている以上、しばらくはアレクチニブの全盛期となっていくだろう。
(抄読会担当:井部、まとめ:児玉)