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2019年5月22日水曜日

Effect of Titrating Positive End-Expiratory Pressure (PEEP) With an Esophageal Pressure-Guided Strategy vs an Empirical High PEEP-Fio2 Strategy on Death and Days Free From Mechanical Ventilation Among Patients With Acute Respiratory Distress Syndrome: A Randomized Clinical Trial.

本日のJournal Clubは呼吸器内科・石井が、「中等度~重症のARDS患者の人工呼吸器のPEEP設定時に食道内圧を用いる方法の有効性の有無」について、2019年218日電子版で公開されたJAMAの論文を解説してくれました。

【抄読会での主な討論】
PEEPを高く設定することで人工呼吸器による肺障害を減らすことはよく言われるようになっている。一般的に知られていることを証明しようとした研究と言える。
・(safety end points で触れられてはいるが)この研究では、High-PeepBarotraumaが増えるかどうかの議論は足りているか。
Limitationsにも述べられているが、2013年のNEJM論文の結論「食道内圧がARDS患者のPEEP設定に有用」ということに疑問を呈した今回の論文の結論だが、NEJMEPVent試験の時と患者集団が異なりすぎている。
・この結果であれば、食道内圧が有用でないという結論よりも、High-Peepの設定が重症のARDSに有用とだけ言えるのではないか。
・伏臥位での研究が足りないという議論は、なんとも北米らしい自由な発想だ。
・最後に、人工呼吸器の理屈は医師でも非常に理解しづらいが、こうしてPEEPなどについて多職種(PTや看護師、薬剤師も含む)に説明するとなるとさらに難しく、説明能力が大きく問われる。その点で、発表する側としては非常にやりがいがあった。
【目的と方法】
ARDSとはICU患者などで臨床上よく問題になる病態であり高い死亡率とQOL低下の原因となる。ARDSの病態は、換気に預かる肺胞の減少であり、虚脱した肺胞の再膨張時の剪断力による障害、過膨張した肺胞の更なる拡張による障害等複雑な要素が絡み合っており、人工呼吸器が原因の肺障害を起こしやすく、それを防ぐ意味でのPEEPを正しく設定することは重要である。2013年、NEJMが実際には技術的に計測できない胸腔内圧のかわりに食道内圧を利用することで、このPEEPの設定値を導くことが出来、ARDSの患者の予後を改善したという研究(EPVent試験)を紹介した論文を掲載した。今回のJAMAの論文はこれにチャレンジしており、中等症~重症の急性呼吸促迫症候群(ARDS)患者において、食道内圧ガイド下の呼気終末陽圧(PEEP)は経験的な高PEEPと比較し、死亡および人工呼吸器不要日数に有意差はないことが認められたと紹介している。米国・コロンビア大学のJeremy R. Beitler氏らが、北米14ヵ所の病院で実施された多施設共同無作為化臨床試験(EPVent-2試験)の結果を報告した。中等症~重症ARDS患者200例で、PESガイド下PEEPと経験的高PEEP/FiO2を比較した。研究グループは、20121031日~2017914日に、人工呼吸器を装着している16歳以上の中等症~重症ARDS患者200例(PaO2FiO2≦200mmHg)を登録し、PESガイド下PEEP群(102例)と、経験的高PEEP/FiO2群(98例)に無作為化し、2018730日まで追跡した。Primary endpointは、死亡と28日間生存人工呼吸器不要日数をそれぞれスコア化し、それぞれの患者でのスコアを合算する形で両群での比較を行った。また、事前に定義した副次評価項目として、28日死亡、生存人工呼吸器不要日数、レスキュー治療の必要性などを組み込んでいた。登録された200例(平均[±SD]年齢56±16歳、女性46%)が、28日間の追跡調査を完遂した。
【結果と結論】
両群で、死亡および28日間生存人工呼吸器不要日数に有意差がみられなかった。死亡と呼吸器離脱日数をスコア化したプライマリーアウトカムでは、両群間で有意差が確認されなかった(食道ガイド下PEEPでより良好なアウトカムが得られる確率:49.6%、95%信頼区間[CI]41.757.5%、p0.92)。28日間における死亡は、食道ガイド下PEEP102例中33例(32.4%)、経験的High-PEEP/FiO298例中30例(30.6%)で確認された(リスク差:1.7%、95CI:-11.114.6%、p0.88)。生存者の人工呼吸器不要日数にも有意差はなかった(中央値:22日[四分位範囲:1524vs.21日[16.524]、中央値の差:0日[95CI:-12]、p0.85)。High-Peep群でレスキューとして気管支拡張薬を必要とした症例が10例あったことから(食道内圧ガイド下群で4例)、全体として食道内圧ガイド下PEEP群で、レスキュー治療を受ける割合が有意に少なかった(3.9%[4/102例]vs.12.2%[12/98例]、リスク差:-8.3%[95CI:-15.8~-0.8]、p0.04)。事前に定義した7つの副次評価項目で有意差が確認されたものはなかった。圧外傷を含む有害事象は、PESガイド下PEEP6例、経験的高PEEP/FiO25例に認めら、優位さを認めなかった(P値>0.99)これらの結果より、中等度~重症のARDSにおいて食道内圧ガイド下PEEPは支持されないと結論付けることが出来る。
この結果が2013年のEPVent試験と異なった理由として、筆者らは前回の試験でのコントロール群である経験的PEEP設定群の①PEEPが全体的に低圧すぎたこと、②ARDSの患者群に呼吸器以外の疾患、特に腹腔内病変が原疾患であるARDS患者が多く(40%程度)含まれていたこと、③軽症、もしくはすぐに軽快したARDS患者が含まれていたこと、などを挙げている。
今回の研究のLimitationsとしては、①サンプルサイズが小さいこと、②食道内圧の正確な測定が依然として難しいこと、③食道内圧が胸腔内圧に大きく影響する部分的な過伸展や無気肺などを反映しないこと、④今回の経験的PEEP設定群のスケール自体の評価が行われていないこと、⑤仰臥位での治療された症例のみを集めており、ARDSで有用である可能性のある伏臥位でのデータが含まれないこと、⑥ARDSに至った原因における考察での比較や考察が行われていないことなどが挙げられた。

(担当:石井、まとめ:石井)

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