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2019年5月29日水曜日

Timing of Renal-Replacement Therapy in Patients with Acute Kidney Injury and Sepsis

研修医1年目の中村先生が、敗血症性急性腎不全患者への早期(12時間以内)の腎代替療法導入と待機的に導入についてのNEJM論文を解説してもらいました。初の抄読会でのプレゼンは指導医井部先生の熱血指導で上手にできたでしょうか?

Discussion
 待機的にみられた群へ無作為に割り振られた患者の中でも、腎障害進行認め、腎代替療法を行わなければならない患者が存在した。その患者数は、待機的腎代替療法群149名中、49名にも上る。最終的に透析を受けていない患者としての解析であり、デザインに無理があるとも考えられる。
 言いたいこととして、シンプルに、12時間以内にあわてて腎代替療法行わなくてよいことがポイントであった。
Backgrounds
急性腎障害は、敗血症性ショックを有する患者において最も頻繁に起こる合併症であり、そして死亡の独立した危険因子である。腎代替療法は重症急性腎障害の標準治療であるが、開始の理想的な時期はControversialである。

Methods
多施設共同無作為化対照試験で、早期敗血症性ショックを有する重度の急性腎損傷を患者を、早期12時間以内に透析を行う群と48時間まで待機的に行う群とに割り当てた。Primary outcome90日での死亡である。

Results
2回目の暫定的な中間分析の後、試験は早期に中止された。合計488人の患者が無作為化を受けた。ベースライン時の特性には、グループ間の有意差はなかった。 90日後の追跡データが入手可能であった477人の患者のうち、早期戦略群の58%(239人中138人の患者)および遅延戦略群の54%(238人中128人の患者)が死亡した(p=0.38)。遅延戦略群では、38%(93例)が腎代替療法を受けなかった。緊急腎代替療法の基準は、遅延戦略群の患者の17%(41人の患者)で満たされた。

Conclusion
重症急性腎障害を有する敗血症性ショック患者では、腎代替療法の開始のための早期戦略に割り当てられた患者と遅延戦略に割り当てられた患者との間で90日時点の全死亡率に有意差はなかった。 (フランスの保健省によって資金提供された; IDEAL-ICU ClinicalTrials.gov番号、NCT01682590。)



Severe Asthma Meeting in Tokorozawa




重症喘息/難治性喘息についての研究会です。AZ社の協力にて所沢で開催いたしました。一般講演では、防衛医科大学校病院 佐々木先生より、クローン病治療中にアスペルギルス感染によって、ABPA発症した症例報告をして頂きました。特別講演では、宮田先生の明快な気管支喘息について、疫学から病態更には最新の喘息治療のお話を聞くことができました。みなさんありがとうございました。


 重症喘息


吸入ステロイドと合剤など、有効な喘息治療薬が普及するにつれて、喘息によって死亡する患者は減少しています。

しかし、いまだに、全世界的にみても、喘息に伴って死亡する患者は多くいることも事実であります。日本では、喘息患者の7%が死亡するとされています。

埼玉県では、喘息によって死亡する患者は64名(2014年)であり、全国で7番目に多い県であります。
しかし、10万人の人口対比でいうと、47都道府県で後ろから7番目になります。空気の綺麗な県ともいえるのかもしれません。




2019年5月22日水曜日

Effect of Titrating Positive End-Expiratory Pressure (PEEP) With an Esophageal Pressure-Guided Strategy vs an Empirical High PEEP-Fio2 Strategy on Death and Days Free From Mechanical Ventilation Among Patients With Acute Respiratory Distress Syndrome: A Randomized Clinical Trial.

本日のJournal Clubは呼吸器内科・石井が、「中等度~重症のARDS患者の人工呼吸器のPEEP設定時に食道内圧を用いる方法の有効性の有無」について、2019年218日電子版で公開されたJAMAの論文を解説してくれました。

【抄読会での主な討論】
PEEPを高く設定することで人工呼吸器による肺障害を減らすことはよく言われるようになっている。一般的に知られていることを証明しようとした研究と言える。
・(safety end points で触れられてはいるが)この研究では、High-PeepBarotraumaが増えるかどうかの議論は足りているか。
Limitationsにも述べられているが、2013年のNEJM論文の結論「食道内圧がARDS患者のPEEP設定に有用」ということに疑問を呈した今回の論文の結論だが、NEJMEPVent試験の時と患者集団が異なりすぎている。
・この結果であれば、食道内圧が有用でないという結論よりも、High-Peepの設定が重症のARDSに有用とだけ言えるのではないか。
・伏臥位での研究が足りないという議論は、なんとも北米らしい自由な発想だ。
・最後に、人工呼吸器の理屈は医師でも非常に理解しづらいが、こうしてPEEPなどについて多職種(PTや看護師、薬剤師も含む)に説明するとなるとさらに難しく、説明能力が大きく問われる。その点で、発表する側としては非常にやりがいがあった。
【目的と方法】
ARDSとはICU患者などで臨床上よく問題になる病態であり高い死亡率とQOL低下の原因となる。ARDSの病態は、換気に預かる肺胞の減少であり、虚脱した肺胞の再膨張時の剪断力による障害、過膨張した肺胞の更なる拡張による障害等複雑な要素が絡み合っており、人工呼吸器が原因の肺障害を起こしやすく、それを防ぐ意味でのPEEPを正しく設定することは重要である。2013年、NEJMが実際には技術的に計測できない胸腔内圧のかわりに食道内圧を利用することで、このPEEPの設定値を導くことが出来、ARDSの患者の予後を改善したという研究(EPVent試験)を紹介した論文を掲載した。今回のJAMAの論文はこれにチャレンジしており、中等症~重症の急性呼吸促迫症候群(ARDS)患者において、食道内圧ガイド下の呼気終末陽圧(PEEP)は経験的な高PEEPと比較し、死亡および人工呼吸器不要日数に有意差はないことが認められたと紹介している。米国・コロンビア大学のJeremy R. Beitler氏らが、北米14ヵ所の病院で実施された多施設共同無作為化臨床試験(EPVent-2試験)の結果を報告した。中等症~重症ARDS患者200例で、PESガイド下PEEPと経験的高PEEP/FiO2を比較した。研究グループは、20121031日~2017914日に、人工呼吸器を装着している16歳以上の中等症~重症ARDS患者200例(PaO2FiO2≦200mmHg)を登録し、PESガイド下PEEP群(102例)と、経験的高PEEP/FiO2群(98例)に無作為化し、2018730日まで追跡した。Primary endpointは、死亡と28日間生存人工呼吸器不要日数をそれぞれスコア化し、それぞれの患者でのスコアを合算する形で両群での比較を行った。また、事前に定義した副次評価項目として、28日死亡、生存人工呼吸器不要日数、レスキュー治療の必要性などを組み込んでいた。登録された200例(平均[±SD]年齢56±16歳、女性46%)が、28日間の追跡調査を完遂した。
【結果と結論】
両群で、死亡および28日間生存人工呼吸器不要日数に有意差がみられなかった。死亡と呼吸器離脱日数をスコア化したプライマリーアウトカムでは、両群間で有意差が確認されなかった(食道ガイド下PEEPでより良好なアウトカムが得られる確率:49.6%、95%信頼区間[CI]41.757.5%、p0.92)。28日間における死亡は、食道ガイド下PEEP102例中33例(32.4%)、経験的High-PEEP/FiO298例中30例(30.6%)で確認された(リスク差:1.7%、95CI:-11.114.6%、p0.88)。生存者の人工呼吸器不要日数にも有意差はなかった(中央値:22日[四分位範囲:1524vs.21日[16.524]、中央値の差:0日[95CI:-12]、p0.85)。High-Peep群でレスキューとして気管支拡張薬を必要とした症例が10例あったことから(食道内圧ガイド下群で4例)、全体として食道内圧ガイド下PEEP群で、レスキュー治療を受ける割合が有意に少なかった(3.9%[4/102例]vs.12.2%[12/98例]、リスク差:-8.3%[95CI:-15.8~-0.8]、p0.04)。事前に定義した7つの副次評価項目で有意差が確認されたものはなかった。圧外傷を含む有害事象は、PESガイド下PEEP6例、経験的高PEEP/FiO25例に認めら、優位さを認めなかった(P値>0.99)これらの結果より、中等度~重症のARDSにおいて食道内圧ガイド下PEEPは支持されないと結論付けることが出来る。
この結果が2013年のEPVent試験と異なった理由として、筆者らは前回の試験でのコントロール群である経験的PEEP設定群の①PEEPが全体的に低圧すぎたこと、②ARDSの患者群に呼吸器以外の疾患、特に腹腔内病変が原疾患であるARDS患者が多く(40%程度)含まれていたこと、③軽症、もしくはすぐに軽快したARDS患者が含まれていたこと、などを挙げている。
今回の研究のLimitationsとしては、①サンプルサイズが小さいこと、②食道内圧の正確な測定が依然として難しいこと、③食道内圧が胸腔内圧に大きく影響する部分的な過伸展や無気肺などを反映しないこと、④今回の経験的PEEP設定群のスケール自体の評価が行われていないこと、⑤仰臥位での治療された症例のみを集めており、ARDSで有用である可能性のある伏臥位でのデータが含まれないこと、⑥ARDSに至った原因における考察での比較や考察が行われていないことなどが挙げられた。

(担当:石井、まとめ:石井)