本日の抄読会は初期研修医・森山先生が担当しました。
HIV患者のIRIS(免疫再構築症候群)での結核予防にプレドニゾンが有効かどうかを扱った先月のNEJMのArticleを紹介しています。
【目的と方法】
HIV感染患者は特に途上国では結核(TB)を合併しやすく、抗レトロウイルス療法(ART)の早期開始で奇異性結核関連の免疫再構築症候群(IRIS)が発生する場合がある。南アフリカ共和国のUniversity of Cape TownのMeintjesらは、高リスク患者240名を対象としてプレドニゾンのIRIS予防効果を検証するRCTを行った(対照群はプラセボ)。年齢の中央値は36歳、60%が男性であり、73%が塗抹検査などで結核を確認していた。 HIV1型(HIV-1)RNAウイルス量の中央値は1ミリリットルあたり5.5 log10コピー(四分位範囲、5.2〜5.9)であった。プライマリーエンドポイントは、ART療法開始後12週以内の結核関連IRISの発症である。
【結果と結論】
プレドニゾン投与のプライマリーエンドポイント有効性が示された(RR:0.70)。介入群の13.3%、対照群の28.3%に結核関連IRIS治療のため非盲検でプレドニン(20㎎/40㎎)が使用された。INSHI基準を満たした結核関連IRISは、プレドニゾン群の39人(32.5%)、プラセボ群の56人(46.7%)だった(相対リスク0.70、95%信頼区間0.51-0.96、p=0.03)。IRIS持続期間は両群同等だった(49日
vs 35日)。84日の累積IRIS罹患率はプラセボ群よりプレドニゾン群のほうが低かった(ハザード比0.61、95%信頼区間0.41-0.92)。死亡率・有害事象には差がなかった。プレドニゾン群では5人、プラセボ群では4人が死亡した(P = 1.00)。 プレドニゾン群では11例、プラセボ群では18例(P =
0.23)で重篤な感染症(後天性免疫不全症候群を定義する病気または浸潤性細菌感染症)が発生した。 カポジ肉腫の1例がプラセボ群で発生した。ART療法の副作用としてのIRISという厄介な事象と考えられてきた病態に対し、低コストで簡単な戦略を提示した。現場実践にインパクトのある結果である。
【抄読会での主な討論】
・通常のART療法での結核発生率が30%前後であり、本研究ではステロイド使用群で30%である。プラセボ群は40%と、レファレンスが高い印象がある。
・IRISというのが古くは初期増悪として知られていたが、最近注目されてきている。
・ICIでも免疫賦活で同様の事象があるからというのも注目されている理由か。
・ARTの先駆けて感染症治療を優先的に行うとART自体の治療効果が落ちるとされているから、その意味では予防という意味でのPSLはどうなんだろうか。
・PSLの投与量はいかに20㎎/日と40㎎/日で分けられたのだろうか。その容量は妥当と言えるか。
・プラセボ群でTBの発症率が異常に高く出ているのは試験的にどうなのか。
・プレドニゾンの予防投与でART療法そのものの効果は変わらないと言えるのか。
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