本日のJournal Clubは、薬剤部の福田先生に、成人・思春期児の合併症のないインフルエンザに対する新規抗インフルエンザ薬バロキサビル(日本名:ゾフルーザ🄬)の有効性について、9月発表のNEJMの論文を紹介していただきました。
本当に臨床的に費用対効果を考慮して必要であるか議論あるところです。
【目的と方法】
バロキサビル・マルボキシル(日本名:ゾフルーザ®)は、インフルエンザウイルスのキャップ依存性エンドヌクレアーゼ選択的阻害薬である。現在の抗ウイルス薬に対する耐性株を含むインフルエンザ A、B ウイルス感染の前臨床モデルにおいて、マルボキシルは治療活性が示されている。CAPSTONE-1試験は、日本および米国で2016年12月から2017年3月までにインフルエンザ様症状を呈した合併症のない12-64歳を対象とし、バロキサビル、オセルタミビル(日本名:タミフル🄬)、あるいはプラセボ群に2:2:1で割り付けた二重盲検ランダム化比較試験(RCT)である。ただし、オセルタミビル群だけは異常行動との関連の問題が指摘されていた関係で10歳代への処方制限がある時期の研究であるため、20-64歳を対象とした(2018年8月21日より10歳代への処方再開が認められている)。用量範囲探索(10~40 mg)プラセボ対照試験を行った後、16~17 年のインフルエンザ流行期間中に、12~64 歳の患者を対象に、プラセボ群およびオセルタミビル投与群を対照とし、体重に基づく用量(40 mg または 80 mg)のバロキサビルを単回投与する試験を行った。オセルタミビルの用量は75 mg を 1 日 2 回で5 日間投与とした。主要有効性評価項目は、intention-to-treat感染集団におけるインフルエンザ症状緩和までの時間とした。
【結果と結論】
結果として、1436例がランダムに割り付けされ(8割弱が日本から登録)、ITTI集団(intention-to-treat
infected population)は1064例であった。主要評価項目である「症状緩和までの期間」はITTI集団でバロキサビル群がプラセボ群より有意に短いという結果だった(中央値53.7時間 vs. 80.2時間)。つまり、パロキサビル投与で有症状期間を約1日短縮するということが示され、またレジメン開始後 1 日の時点におけるウイルス量のより大きな減少が示された。しかし、バロキサビル群とオセルタミビル群との比較については有意差がなかった(中央値絶対差は0.3時間)。結論として、合併症のないインフルエンザ患者において,バロキサビルの単回投与は,明らかな安全性への懸念を伴わず,症状の緩和についてはプラセボに対して優越性を示した。いっぽうで有害事象の発生は、バロキサビル群20.7%、プラセボ群24.6%、オセルタミビル群24.8%で認められた。バロキサビルへの感受性低下につながるI38T/M/F置換を伴うポリメラーゼ酸性蛋白領域の変異は、第II相試験とCAPSTONE-1試験で、それぞれバロキサビル投与例の2.2%と9.7%で認められた。
【抄読会での主な討論】
・ゾフルーザは日本小児学会の推奨が得られなかったので、日本ではなかなか売れないか。
・Table2のゾフルーザ投与群でプラセボ群より体温が高かったりしている、本当に二重盲検化できているのだろうか。
・ここでAdverse Eventsとされているものの殆どはインフルエンザの症状そのものだったりするので、それはしっかり副作用と区別できているのだろうか。
・10人に1人の耐性化がやはり非常に気になる。ゾフルーザ投与で罹患期間が延びるとか信じられない。
(担当:福田、まとめ:石井)
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