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2018年11月7日水曜日

Novel therapies for malignant pleural mesothelioma

今回は、濵元の担当で悪性胸膜中皮腫のレビューをまとめました。
Abstract
悪性胸膜中皮腫(MPM)はアスベストに関連した希少癌であり、予後不良である。基本的な治療法はCDDP+Pemの化学療法であるとされているが、その効果は短期間であり1st line以降の治療法に関しては確立した治療法が存在しない。Bevとのコンビネーション法が新たに可能性を見せている。一方、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)2nd line以降として効果が期待されている。本レビューではICI、分子標的薬、その他治療法に関して改めて現段階の治療法について述べる。


Introduction
MPMは希少癌であり、1年での発症率はアメリカで10/1万人程度である。しかし欧州での発症ピークは2020年台であると考えられており、更に発展途上国においては未だにアスベストを使用していることから今後の増加が予想されている。
MPMの治療法は未だに確立しておらず、その予後も不良である。手術の適応となる患者も少なく、1st lineとしてのCDDP(CBDCA)+Pem治療はこの15年間で不変の標準治療となっている。しかしそのOSは最も予後の良いepithelioid MPMでも13-16か月程度とされている。
MPMに対しての放射線療法は基本的にはまれであり、照射の理由としては疼痛緩和目的であることが多い。現在intensity modulated radiotherapyprotontherapyなどが試みられている。一方手術後の予防的照射に関してはSMART/PIT試験の結果を受け2018年ガイドラインで推奨されていない。
 1st line以降の治療法は現在承認/推奨されているものはPemベースの再投与以外は存在しない。過去にVNR,Gemなどの試験が行われたもののOS6か月に満たず効果不十分とされた。以上より、新規治療が望まれており、本論文ではその新規治療法の展望を述べる。

<分子標的療法>
・抗血管新生薬
近年までMPMに対する血管新生薬の効果は認められていなかった(2nd line サリドマイド、1st line CDDP+Gem+Bevなど)。一方、448人のMPMに対する一時治療を評価したMAPS試験(CDDP+Pem+BevBev maintenance)では僅かながらOSの延長が認められた(18.82か月 vs 16.07か月, HR 0.67)PFS2か月程度の延長を認め、これにより切除不能な患者への治療法としてNCCNガイドラインなどに掲載された。(FDAでは認可なし)
 高血管新生薬に対するバイオマーカーは存在せず、従来の試験と反対の結果となった理由はわかっていない。
また、VEGFR-TKIの一つであるnintedanibはプラセボ群と比較してphase2試験でPFSの延長を認めた(PFS 9.7か月vs 5.7か月、OS 20.6か月vs 15.2か月 p=0.197)。現在はepithelioid型に対するphase3試験が進行中である。
更にphase1試験であるものの、CDDP+Pemへの上乗せ効果としてcediranibも試験されている。(mPFS16.2か月)
ICI
CTLA4
MPMに対してのICI治療はPD-L1陽性率が低い患者において有効との報告がある(PD-L1(+)vs PD-L1(-)5.0か月vs14.5か月)。従ってPD-L1陽性はMPMにおいて予後不良のリスク因子となる。現在ICI関連の治療法は検索が続けられている。その中で抗CTLA-4抗体、tremelimumabphase2試験においてPEに達しなかったもののPFS6.2か月、mOS 10.7か月の結果となった。一方で大規模phase2b試験のDETERMINE試験では2nd line以降のtremelimumab vs プラセボでnegative studyとなっている。
PD-L1
PD-1/PD-L1経路に関してはphaes1b試験としてpembrolizumabが投与され、ORRの中央値が12か月との結果になっている。その他試験でも、1st line2nd line、あるいは単剤投与/コンビネーションと様々行われているが比較的良好な結果となっている。
2017ASCOではMAP2試験(MPM1st line failure に対するnivo±ipilimumab)duration of response 7.9か月、nivolumab単剤群でのmOS 13.6か月と良好な結果を示した。この試験ではPD-L1>1%nivolumab単剤投与群でOSが延長する傾向にあった。この試験を受け、1st line failureの患者に対する抗PD-1抗体/PD-L1抗体の投与は有効であると考えられ、更なるランダム化試験が必要と考えられる。
現在どの患者に対して有効かはわかっていないものの、傾向としてPD-L1発現が高値な患者でより有効な可能性が考えられている。オーストラリアの試験ではPD-L1>50%の患者においてORR50%(<50%では22%)と優位な差を認めている。
・その他免疫薬
グリコプロテインであるmesothelinMPMを含むいくつかの癌腫に発現するといわれており、これを標的とした臨床試験が行われている。例としてAmatuximabCDDP+Pemへの上乗せ効果を期待され、phase2試験が組まれている。しかし2017年現在ではこの試験はprematureとして中止されている。その他試験でも現在はphase2以上で十分な結果を出した薬剤は少ない。
現在進行中のphase3試験としては、CDDP+Pem治療後の樹状細胞へのシクロホスファミド投与による治療に関するDENIM試験や、アデノウイルスの胸腔内侵入を利用したcelecoxibと化学療法の治療などがある。

<結論>
治療法のほとんどない時代を経て、近年MPMの患者への新規治療法が考えられている。特にICIはメラノーマ、NSCLCなどでの成功を基に、非常に期待される治療法である。現段階でのMPMへの治療は不十分であり、今後の研究が期待される。また、血管新生阻害薬もMPMにおける1st lineのコンビネーション療法が標準化される可能性がある。この両者を利用したICI+血管新生阻害薬のphase1試験も行われており、今後更なる新レジメンが見つかる可能性がある。
(担当;濵元、まとめ:児玉)











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