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2018年6月6日水曜日

Quadrupling Inhaled Glucocorticoid Dose to Abort Asthma Exacerbations.

薬学学生の岡崎さんの担当です。高容量吸入ステロイドの威力についての検討されたものです。
実臨床としては、本当に必要なのでしょうか?肌感覚としては、微妙な論文ですが、NEJMでした。

<背景>
喘息は慢性疾患の中でも比較的一般的な疾患であり、世界で約3億人が罹患していると推定されている。喘息の増悪は時に致命的になり、患者にとっては恐れるべき状況である。
現在は患者の喘息自己管理において、ステロイド量を2倍に増量することは増悪の改善につながらないと考えられている。
我々は患者の喘息の自己管理という観点から、喘息コントロールが不良になってきたタイミングでの4倍量の吸入ステロイドが成人の喘息増悪を抑制する可能性について評価した。


<方法>
非盲検多施設ランダム化試験

対象:16歳以上で喘息の診断をされている患者。
   吸入ステロイド投与を受けている患者
   12か月で1回以上の増悪をきたし、全身ステロイド療法を行った患者

喘息の増悪状態で4つのzoneを設定し、
Zone1…コントロール良好な喘息、現治療の継続
Zone2…増悪しつつある喘息であり、吸入薬物の増量を指示(ステロイドはそのまま、ないし4倍量。気管支拡張薬は両者増量)
Zone3…経口ステロイドが必要と考えられ、医療介入が必要な増悪
Zone4…致死的な増悪

Zone2の段階の患者への投与量で2群に分けた。

PE:喘息の増悪(全身ステロイド療法・喘息の予約外受診)までの期間
SE:増悪した患者数、Mini-AQLQscoreなど

<結果>
3万人に試験登録を呼びかけ、最終的に1922人がランダム化に参加した。その後の脱落などで938人が4倍量吸入、933人が従来吸入群となった。

1922人のうち、1114(58%)が観察中にzone2以上の増悪をきたした。

4倍量群
従来群
HR
増悪人数
420(45%)
484(52%)
0.81(p=0.002)
全身ステロイド使用人数
311(33%)
377(40%)

Under the curvePeak flow
1166L/min/day
1130L/min/day

AEとして最も多かったのは喘息による入院(4倍量群で3回、従来群で18)
肺炎/下気道炎は4倍群で5例、従来群で6例認めた。

<考察>
本試験では成人に対する喘息増悪時に4倍量の吸入ステロイドを投与することで重症喘息の増悪への発症頻度を抑えることができることを示した。
また、吸入量を増やすことで、予想通りに経口カンジダなどの副作用が増えることが分かった。しかし、特に注意を払っていた肺炎の頻度に関しては、両者大きな差は認めなかった。
この事から我々は一時的に吸入量を増量することが臨床的にも益があると考える。


Limitationopen labelによる患者側へのバイアス(医療機関への受診の閾が下がった可能性がある)
(担当:薬学岡崎、まとめ:児玉)

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