<背景>
未治療のNSCLC患者に対する標準的な治療はPtダブレット±Bev(非扁平上皮癌なら)、あるいは分子標的薬(遺伝子変異があれば)、あるいはPD-L1発現≧50%なら抗PD-1抗体、PD-L1≧50%かつ非扁平上皮癌なら抗PD-1抗体+Pt製剤、といった選択肢がある。しかし現状ではまだその予後は十分なものではない。
抗PD-L1抗体であるatezolizumabは既治療のNSCLC患者に対し、PD-L1は発現に関わらず良好なOSを呈し、未治療のNSCLC患者に対してはPt製剤との併用にて十分な効果と安全性を発揮する事がこれまでの報告で分かっている。更に、EGFR変異のあるNSCLC患者に関しては2nd line以降でのチェックポイント阻害薬の使用ではほとんど効果がないことが知られており、1st line failureの患者に対する有効な治療法が求められている。
Bev併用の化学療法は非扁平NSCLC患者に対し承認されている。すでに知られている血管新生阻害に加え、VEGF阻害自体が免疫調節的な役割を果たしており、Bevを加えることでatezolizumabの作用増強の可能性が示唆されている。
以上を踏まえ、IMPOWER150試験では2つの疑問を元に試験をデザインした。
①
VEGF阻害により免疫阻害薬の効果が増強されるのか?
②
化学療法と免疫阻害薬の併用は有効なのか?
最初の質問に対してはAtezolizumabを化学療法+Bevに追加し、2つめはBevをatezolizumabに変えることで評価した(本論文では②は表記されていない。)
<方法>
国際open-label試験。Phase3
対象: 未治療のstageⅣないし再発性の転移性非扁平NSCLC
ECOG0-1、 PD-L1発現は制限なし。
EGFR/ALK変異は、分子標的薬failure後であれば許容された。
除外:CNSメタ、自己免疫性疾患、抗CTLA-4阻害薬を6週以内に投与されている場合、全身性免疫阻害薬を2週間伊内に投与されている場合。
アジュバントの化学療法は、6か月以前に最終投与であれば許容された。
Atezolizumab+カルボプラチン+パクリタキセル(ACP)
Atezolizumab+Bev+カルボプラチン+パクリタキセル(ABCP)
Bev+カルボプラチン+パクリタキセル(BCP)
の3群に分け、1:1:1に割り付けられた。
Induction phaseの後はmaintenanceとしてatezolizumab、Bev、ないし両方を有害事象/PDまで継続投与した。Atezolizumabに関してはbeyond PDも許容された。Crossoverは許容されなかった。
PE:EGFR遺伝子変異またはALK融合遺伝子陽性患者を除く(WT人口)集団のPFS、OS及びeffectorT細胞高表現のWT人口集団でのPFS
SE:ITT全集団(EGFR,ALK含)でのPFS、OS
PD-L1表現集団のPFS、ORR
腫瘍径評価を6週おきに48週までと、その後PDまで9週おきに評価した。
<結果>
2015年3月~2016年12月での1202人の患者(ITT集団)
をACP(402人)、ABCP(400人)、BCP(400人)に分けた。このうちWT集団は全体の1040人(86.5%)
SEすべてmPFS
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ACP
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ABCP
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BCP
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HR
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ITT集団の人数
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348人
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356人
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336人
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Teff-high集団
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161人
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155人
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129人
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WTのmPFS
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8.3か月
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6.8か月
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0.62(p<0.001)
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PD/死亡数
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241/356(67.7%)
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276/336人(82.1%)
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高Teff群のmPFS
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11.3か月
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6.8か月
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0.51(p<0.001)
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PD/死亡数
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97/155(62.6%)
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103/129(79.8%)
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遺伝子変異(+)群
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9.7か月
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6.1か月
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0.59
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ITT集団全体
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8.3か月
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6.8か月
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0.61
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PD-L1低発現/陰性群
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8.0か月
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6.8か月
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0.68
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PD-L1高発現群
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12.6か月
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6.8か月
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0.39
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Teff-low群
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7.3か月
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7.0か月
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0.76
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mOS
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19.2か月
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14.7か月
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0.76(p=0.02)
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ORR
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63.5%
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48.0%
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AEとしては
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ABCP
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BCP
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全Grade
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94.4%
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95.4%
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治療関連死
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11人(2.8%)
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9人(2.3%)
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G3-4で最も多かったのは好中球減少、FN、HT
IrAEとしてはG1-2が77.4%、G5は0件。肝炎・皮疹・甲状腺・IP・大腸炎などが多かった。
<考察>
12か月時点でのPFSはABCP群でBCP群の2倍程度(36.5%vs18.0%)であり、ORRに関しても63.5% vs 48.0%と明らかな有効性を示した。また、PD-L1低発現・Teff-low群・EGFR/ALK変異群などのサブグループでも長期PFSを示した。しかし、PD-L1に関しては高発現の方がよりその傾向が強かった。PD-L1低発現・陰性群でも良好な成績を示したことは非常に有益である。また、従来はあまり効果がないと考えられていたTKI後のcheckpoint阻害薬が、本試験では有効であったことは特筆に値する。
これまでのphase2-3のatezolizumab vs docetaxelでは見られなかったPFSの良化を認めた理由としては、Bev,化学療法との併用によりatezolizumabへの効果が増強した可能性や、本試験ではearly lineでの治療であったことが推察される。
AEはそれぞれの薬剤特有のものが出現するものの、発生率はこれまでの報告と大きく変わらなかった。
1st line としてAtezolizumab+Bev+化学療法の治療により、PD-L1表記・遺伝子変異に関わらず良好なPFS/OSが認められた。
Limitation:
・大規模試験のため、前治療などに関しては個々の機関に一任している。
・Atezolizumab+Bev+カルボプラチン+パクリタキセルのレジメンでのみ行っているため、ほかの化学療法に関しては不明。
(担当:児玉、まとめ:児玉)
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