本日も、薬学学生さんが抄読会を担当してくれました。以前の、エドキサバンに続く、リバーロキサバンでのDVTの臨床試験結果です。
<背景>
静脈血栓症(VTE)は担癌患者にて比較的よくみる疾患である。担癌患者の再発性VTEのリスクは、癌のない患者の2倍以上ともいわれており、こういった患者に対しては最低6か月の低分子ヘパリン(LMWH)が標準的治療とされている。しかし担癌患者への6か月以上にわたる長期間でのエビデンスには乏しい。
この10年で新たにDOACがVTEに対して使用可能となっている。その中にはdabigatran,rivaroxaban,apixaban,edoxabanなどがあるが、これらは経口投与ができ、モニタリングを必要としないなどの利点がある。以前にもEINSTEIN試験などでribaroxabanとLMWHとの比較試験があったものの、登録患者のうち担癌患者は5.5%であった。この事から我々は、担癌患者においてribaroxabanとdalteparinとでVTEの再発率に差があるかを評価した。
<方法>
Open-labelの多施設共同試験@イギリス
対象:VTE(DVT,PE)の診断をされた担癌患者。(担癌患者は6か月以内に診断された/6か月以内に治療された患者)
18歳以上、40kg以上、PS2以下、腎肝機能が正常な患者。
除外基準:
抗凝固薬、アスピリンなどを投与されている患者、肝機能不全の患者、出血のリスクが高い患者、コントロール不良のHTなど
Dalteparinは最初の30日間は200IU/kg(MAX18000IU)、その後150IU/kgを5か月継続。
Rivaroxabanは15mg 2T2Xを最初の3週間、その後20mg 1T1Xを6か月目まで継続。
PE:VTEの再発
SE:重大な出血事象、重大ではないが臨床的に問題となる出血事象(CRNMB)
<結果>
最終的に406人がランダム化に参加した。203人ずつがdalteparin群、rivaroxaban群にそれぞれ割り付けられた。
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Dalteparin群
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Rivaroxaban群
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HR
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VTE再発
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18人(11%)
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8人(4%)
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0.43
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重大出血
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6人(4%)
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11人(6人)
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CRNMB
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7人
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25人
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出血として多かったのはGIであり、CNS出血は認めなかった。
<考察>
本試験ではrivaroxabanがdalteparinと比較して再発性VTEのリスクを下げる事を示した。EINSTEIN試験でrivaroxabanはLMWHと比較しても非劣勢であることが報告されており、CLOT試験ではdalteparinがLMWHと比較してVTE再発を50%減らしたと報告されている。この事から、rivaroxaban投与によるVTE再発リスクは低いことが予想でき、実際試験結果では4%とリスクを下げる事に成功した。
SEとして重大出血、CRNMBについても評価したが、特にCRNMBに関してはdalteparinの3倍のリスクがあった。
以上の点より、リバロキサバンは担癌患者のVTEに対してはLMWHの代替として有効である一方、出血のリスクは挙げることが分かった。経口内服ができる点は連日の点滴より明らかに便利であり、今後の治療方針に期待が持てると考える。
Limitation:
患者数登録が予想よりも時間がかかった点
試験自体が6か月であり、それ以上の治療に関しては不明な点がある。
(担当:加世田、まとめ;児玉)
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