今回は、井部先生の担当で、MepolizumabとEGPAへの検討です。
<背景>
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)は喘息、副鼻腔炎、肺浸潤、ニューロパチーなどの
症状をきたす疾患であり、好酸球がこれら症状に関与すると考えられている。治療法とし
てステロイドが中心的役割を担っているが、再発も頻繁であり、ステロイド内服を継続が
必要になることも多い上、患者によってはステロイドでは十分な効果が出ない場合もある
。必要に応じ免疫抑制療法も使用されることがあるものの、現時点ではエビデンスが不十
分である。
IL-5は好酸球の成熟・分化などにかかわり、EGPAでは上昇していることが知られている。
そのため抗IL-5抗体であるmepolizumabはEGPAの治療薬として期待される。本研究の目的はEGPAに対するmepolizumab使用の効果と安全性を確認するものである。
<方法>
Randomized placebo-controlledの二重盲検phase3試験
対象:再発性、難治性EGPAと診断されてから6か月以上経過している18歳以上の患者。
4週間以上PSL7.5-50mgの範囲で使用されている。
除外:GPA,MPAの診断がついた患者
服用中のステロイドに加え、Mepolizumab 300mg/4週 ないしプラセボを投与された。52週にわたり観察を行い、4週目以降は医師の裁量でPSLの減量が認められた。免疫抑制療法を行っている患者は試験中一定量を継続した。
PE:①緩解した週数の割合
(緩解はBVAS ver3.0にて0点、かつ内服PSL<4mgと定義)
②36週、48週で緩解を保っていた割合
SE: 24週-52週の間緩解を保っていた患者の割合
再発までの期間
PSL内服量の割合
<結果>
136人が割り付けに参加し、61人がmepolizumab群、65人がプラセボ群とした。
Mepolizumab群
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プラセボ群
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Hazard/odd ratio
| |
24週以上緩解状態
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28%
|
3%
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5.91
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24週目~52週目まで緩解継続
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19%
|
1%
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19.65
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緩解に至らなかった割合
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47%
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81%
| |
Eo<150/mlの緩解割合
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21%
|
7%
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Eo≧150/mlの緩解割合
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33%
|
0%
| |
52週以内に再発した割合
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56%
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82%
|
0.32
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全AE
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97%
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94%
| |
重症AE
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18%
|
26%
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mepolizumab群で1例死亡例(44歳)があり、原因として心筋炎が疑われたが、元々心疾患を要していたため直接的な関係性は不明
<考察>
再発性・難治性EGPAに対し、mepolizumabはプラセボ群と比較して優位に緩解率をあげた。しかし半数程度は緩解に至っておらず、すべてのEGPA患者がmepolizumabの利益を得られるわけではなさそうである。
その理由としては
- EGPAの中にeosinoが直接関係していない群があることが否定できない点
- 抗IL-5抗体がすでに無効なレベルまで臓器障害などが進行してしまっている可能性
- Mepolizumabの投与量が不足している可能性
- 長期PSL内服のため副腎不全状態になっており、PSLのtaperingがそもそもできなかった患者がいる可能性。
などが考えられる。
Limitation:
- BVASは厳密にはEGPAの病勢評価のための指標ではない
- 患者によってPSLの初期投与量が異なる点
- ANCA陽性のEGPAが全体の10%程度しかいなかった点。
<感想>
Mepolizumab(ヌーカラ)のEGPAへの効果を判定した報告。現時点では臨床的にPSLを使用し、効果に乏しい場合は免疫抑制剤を検討するものの、報告にある様にエビデンスはそれほど多くはない。本研究ではPSLでの治療不良例に対してのmepolizumab使用であり、臨床的に自然な使用方法となっている。
結果としてはmepolizumab使用例で緩解は28%とそれほど多くないように見えるが緩解基準がPSL4mg以下、となっており、難治性例であればPSLはもう少し多い量で経過観察するであろう。実臨床で使用した場合はもう少し緩解例は多くなる可能性がある。
(担当:井部、まとめ:児玉)
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