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2017年9月6日水曜日

Dabrafenib in patients with BRAFV600E-positive advanced non-small-cell lung cancer: a single-arm, multicentre, open-label, phase 2 trial

 今回は、特に少ないとされる遺伝子変異への治療についての抄読会でした。
2016年のLancetです。PMID: 27283860

Lancet Oncol. 2016 Jul;17(7):984-993.

<背景>
NSCLCにおけるBRAF変異はMAPKを介したoncogenic driverとして作用する。
BRAF阻害薬はBRAFV600E変異による肺がん患者に対し抗腫瘍効果があることが示されている。BRAFMEK阻害を行うDual MAPK経路阻害によりmonotherapyよりも高い効果があることがBRAFV600E変異のあるmelanomaに対する報告で分かっており、BRAFV600E変異陽性のNSCLCに対しdabrafenibtrametinib2剤での効果と安全性について今回評価することとした。


<方法>
Multicenter,non-randomizedphase2study。経口のdabrafenib(12150mgずつ)trametinib(112mg)1サイクル21日としてPD・許容できないAEの出現まで継続した。

対象:
18歳以上でBRAFV600E変異陽性のstageNSCLC患者
1line以上の抗癌化学療法を施行した経緯のある患者

除外:
chemo-naïveな患者
BRAFMEK阻害のいずれかの使用歴がある患者

無症候性の脳転移のある患者は1cm以下であること、未治療であるか、局所療法後3週間以上安定している事を条件として許容された。

本研究は3段階ある研究のうち2番目(CohortB)であり、CohortAは前治療ある患者へのdabrafenib単剤による加療、CohortCが前治療のない患者へのdabrafenibtrametinib2剤併用の試験となっている。
PEORR
SEPFSresponse維持の期間、OS、安全性

<結果>
59人の患者が登録された(Asian4)。しかし2人は除外基準に当てはまったため除外。
2015年のcutoffの段階では21人が治療継続中、28人はPD7人はAEのため治療終了となっていた。1人は患者希望のため終了している。
フォローアップの中央値は11.6か月であった。

OR                                        36(63.2%)            2人がCR,34人がPR
DCR                                     45(78.9%)
PFS                                      中央値9.7か月
Duration of response            中央値9.0か月
新規脳転移をきたした患者はいなかった。

治療期間:
中央値10.6か月。17(30%)12か月以上にわたり治療継続した。
OS
中央値未到達だが6か月時点では47(82%)が生存しており、data cutoff時点では34人が生存していた。

AE
7(12%)は治療中止、35(61%)は治療延期
Dabrafenibについて33(58%)20%以上の減量にて継続した。
Trametinib43(75%)20%以上の減量を行った。
ほぼ全員が何らかのAEを経験したもの、G3-4AE28(49%)であった。
AEとして多かったのは発熱(46%)、嘔気(40%)、嘔吐(35%)、下痢(33%)、無力症(32%)など
G3-4に限れば好中球減少(9%)、低Na血症(7%)などであった。
4人が治療中に死亡しているが、いずれも投与薬剤とは無関係と判断された。

59人の初期登録されていたうち、除外された2人の患者はそれぞれ前治療のない患者であった。彼らのうち1人はCR1人はPRであり9.7か月後にPDとなった。

<考察>
この報告はBRAF,MEKcombined治療を行った最初の報告である。結果としてはBRAFV600E変異のある患者に対して非常に良い効果を示し、AEも許容範囲内であった。
BRAFに関しては半数以上がBRAFV600Eであり、その他の変異に関し手はRAS-dependent dimer formationを作動したり、その他経路を使用するためBRAF inhibitorが効きづらいことが報告されている。
単剤治療を行ったcohortAと比較すると、ORR(33%),PFS(5.5か月)に関していずれも今回の試験の方がよい結果となった。Melanomaに関しては同様の報告となっているが、これについては追試験が必要であろう

Limitation
Non-randomized試験である。しかし6000人の調査のうち合致したのが59人のみであり、今後ランダム化試験の実施はかなり困難であることが予想される。

現在CohortC(前治療のないBRAFV600E患者へのcombination投与)が進行中である。この結果にてBRAFV600E変異のあるNSCLC患者へのearly-line投与が望ましいかを知ることができるだろう。
さらに、今後の展望として免疫療法との関係性も検討される必要がある。化学療法との順序も含め、検討課題となるだろう。
安全性に関しては許容範囲内であり、本研究ではPS24名混ざっているものの大きな問題なく終了していることから問題なく投与できると考える。

<感想>
BRAFV600E変異に対する2種類の抗癌剤は本研究を元に米国で承認されている【TAFINLAR® (dabrafenib) MEKINIST® (trametinib)】。しかし記述されているAEの多さを加味するとある程度若い年齢に対して使用する薬剤と考えられる。
問題としてはBRAFの変異自体がROS1並みに少ない(1%)ため、phaseⅢ試験ができず、更に日本人の試験も行えない点がある。特に日本人の薬剤性IPgefitinibの例があり、慎重な観察が必要となると思われる。
ROS1に続きBRAFも承認されていく事が確実であり、更に治療前の遺伝子変異検索を行う必要性が増えていくだろう。
しかし1st lineとして他の化学療法・免疫療法との優位性に関しては不明であり、CohortCの結果が早く知りたいところである。



(担当:井部、まとめ:児玉)

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