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2017年9月20日水曜日

A Higher Proportion of the EGFR T790M Mutation May Contribute to the Better Survival of Patients with Exon 19 Deletions Compared with Those with L858R.

今週の抄読会はレジデントの児玉先生が、T790M遺伝子変異を認めた肺癌がより生存が伸びている検証した論文でした。

PMID: 
28576746
<背景>
EGFR変異の中で、Del19exon21 L858Rはメジャーな変異であり、まずEGFR-TKIにて化療することが推奨されている。しかし、近年この2つの変異ではTKI、化学療法に対する予後が異なるとする報告が散見される。del19の方がTKIに対する反応性がよく、一方で、Leeらやシゲマツらによるとex21 L858Rの方が化学療法に対するPFSが明らかによいことが示されている。これらの報告は、Del19L858Rの予後の違いはEGFR-TKIに対する効果と関連している可能性を示唆している。

EGFR-TKIの獲得耐性のメカニズムはこれまである程度知られているものの、del19L858R変異がそれぞれどのようにTKI耐性を獲得するかについての報告はほとんど存在していない。今回、この2変異がそれぞれどのようなTKI耐性メカニズムを獲得するのか、そしてそれが予後にどのように関連するのかを調べることとした。





patients and methods
対象;
Guangdong Lung Cancer Instituteでの単報告
EGFR変異陽性の進行した肺癌で、1世代・2世代TKI耐性を持ち、postprogression biopsyを行ったものにて評価した。

除外基準;
    De novo T790M変異
    EGFRminor mutation(del19L858R以外は除外)

TKIの耐性メカニズムについては20171月までに出版されたPubmedでの論文を読み、レビューとした。Del19L858Rに関しての情報を集めた。

analsis of resistance mechanisms
PostbiopsyT790M変異、met変異、組織型転換、ALKKRASPIK3CAについて評価を行った。全ての組織は病理的に評価を行い、SCLC,Sqが疑われたものについてはそれぞれ免疫染色を行い確認した。

results
224
年齢:32-87 中央値57
性別:男性102(45.5%)
喫煙:52(23.2%)
組織:Adenocarcinoma 92.9%

Del19L858R変異群の内訳を見ると、年齢以外では明らかな差を認めなかった。
55歳以下で区切るとdel19群の方が明らかに多かった。(47.5% vs 31.8%)

全員が治療でTKIを投与されており、131人がgefitinib85人がerlotinib8人がafatinibだった。2群間でその使用率に有意差は認めなかった。またFrontlineで使用されたTKIの割合も差はなかった。

mechanisms
224人のうちT790Mが最も多く45.1%を占めており、Del19群で明らかに多かった(50.4% vs 36.5%0.043)。しかしこれ以外では明らかな差は認めなかった。

Del19変異
L858R変異
P
T790M
50.4%
36.5%
0.043
MET
18.7%
20.0%
0.811
組織型転換
5.1%
3.6%
0.746
その他
5.8%
6.1%
0.696

また、6本の論文で、del19L858の両変異にてT790M獲得耐性が起きた具体的症例数とその割合を報告していた。そのデータと我々のデータを組みあわせ、計792人の変異患者を集めた。

Del19       473                   258(54.5%)T790M獲得
L858R     319                   119(37.3%)T790M獲得
両群でのT790M獲得率は明らかに有意差を持っていた。
また、喫煙者はnon-smokerよりも優位にT790M変異を発現した。

治療とsurvival analysis
101人のT790M獲得症例のうち、
1人がavitinib臨床試験に登録され、
 10人がAZD9291(タグリッソ)
 70人が化学療法のみ
 20人がBSCとなった。

43人のMETのうち
 12人がINC280臨床試験
 20人が化学療法のみ
 5人がcrizotinib
 5人がBSC

TKI治療失敗後、T790M/MET阻害剤にて加療された患者はdel19群で12.3%L858R群で12.9%だった。
Survival data20171月時点まで評価を行い、合計で191人が亡くなった。


OS中央値
T790M
36.0か月
MET
26.5か月
組織型転換
19.7か月
その他
23.0か月
T790Mと比較した際のHRMET1.809、組織型転換で2.370であった。

年齢、耐性変異、治療は独立した予後因子であった。(3)

Del19OS中央値は33.3か月、L858R26.4か月、HR0.721だった。しかしT790M、年齢、EGFR変異サブタイプをadjustした場合、優位な差はなくなった。この結果はdel19の良好なOST790Mを獲得した患者の年齢が比較的若かったことが影響している可能性がある。

discussion
T790M以外の変異に関しては予後に差がなかった。Del19群の方がT790Mを獲得する割合が多かった。これまでの報告では、T790Mdel19に発現しやすい傾向が認められており、さらにdel19AURA,AURA2,AURA3試験(EGFRTKI前治療のあるT790M陽性患者を対象とした試験)でもL858Rより優位に認められていた。
元々の変異タイプによらずT790M獲得患者の予後がいい理由として、その他獲得変異と比較すると悪性度が低い経過を辿るからと考えられる。OxnardHataは似たような結果をそれぞれ白人・日本人で報告している。
しかしそのメカニズムは未だ不明であり、薬剤への感度が異なること、固有の遺伝子構造的な問題などが考えられている。
結論としては、T790M変異を獲得した患者はその他の耐性メカニズムと比較しよりよい予後となることが分かった。さらに、Del19変異群にてT790Mが多い点を考慮すると、dell19の方が良好な予後となることが推察される。

Limitation
Retrospectiveな研究。
1-6%denovoT790Mを有している可能性がある。
21.4%が実際にbiopsyされるまでの間に化学療法が行われており、T790M変異に対し変化をもたらした可能性が考えられる。

(担当、まとめ;児玉)

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