<背景>
EGFR変異の中で、Del19とexon21 L858Rはメジャーな変異であり、まずEGFR-TKIにて化療することが推奨されている。しかし、近年この2つの変異ではTKI、化学療法に対する予後が異なるとする報告が散見される。del19の方がTKIに対する反応性がよく、一方で、Leeらやシゲマツらによるとex21 L858Rの方が化学療法に対するPFSが明らかによいことが示されている。これらの報告は、Del19とL858Rの予後の違いはEGFR-TKIに対する効果と関連している可能性を示唆している。
EGFR-TKIの獲得耐性のメカニズムはこれまである程度知られているものの、del19とL858R変異がそれぞれどのようにTKI耐性を獲得するかについての報告はほとんど存在していない。今回、この2変異がそれぞれどのようなTKI耐性メカニズムを獲得するのか、そしてそれが予後にどのように関連するのかを調べることとした。
<patients and methods>
対象;
Guangdong Lung Cancer Instituteでの単報告
EGFR変異陽性の進行した肺癌で、1世代・2世代TKI耐性を持ち、postprogression biopsyを行ったものにて評価した。
除外基準;
①
De novo T790M変異
②
EGFRのminor mutation(del19とL858R以外は除外)
TKIの耐性メカニズムについては2017年1月までに出版されたPubmedでの論文を読み、レビューとした。Del19とL858Rに関しての情報を集めた。
<analsis of resistance mechanisms>
PostbiopsyはT790M変異、met変異、組織型転換、ALK、KRAS、PIK3CAについて評価を行った。全ての組織は病理的に評価を行い、SCLC,Sqが疑われたものについてはそれぞれ免疫染色を行い確認した。
<results>
計224人
年齢:32-87 中央値57歳
性別:男性102人(45.5%)
喫煙:52人(23.2%)
組織:Adenocarcinoma 92.9%
年齢:32-87 中央値57歳
性別:男性102人(45.5%)
喫煙:52人(23.2%)
組織:Adenocarcinoma 92.9%
Del19とL858R変異群の内訳を見ると、年齢以外では明らかな差を認めなかった。
⇒55歳以下で区切るとdel19群の方が明らかに多かった。(47.5% vs 31.8%)
全員が治療でTKIを投与されており、131人がgefitinib、85人がerlotinib、8人がafatinibだった。2群間でその使用率に有意差は認めなかった。またFrontlineで使用されたTKIの割合も差はなかった。
<mechanisms>
224人のうちT790Mが最も多く45.1%を占めており、Del19群で明らかに多かった(50.4% vs 36.5%、0.043)。しかしこれ以外では明らかな差は認めなかった。
Del19変異
|
L858R変異
|
P
|
|
T790M
|
50.4%
|
36.5%
|
0.043
|
MET
|
18.7%
|
20.0%
|
0.811
|
組織型転換
|
5.1%
|
3.6%
|
0.746
|
その他
|
5.8%
|
6.1%
|
0.696
|
また、6本の論文で、del19とL858の両変異にてT790M獲得耐性が起きた具体的症例数とその割合を報告していた。そのデータと我々のデータを組みあわせ、計792人の変異患者を集めた。
Del19 :473人 258人(54.5%)がT790M獲得
L858R :319人 119人(37.3%)がT790M獲得
両群でのT790M獲得率は明らかに有意差を持っていた。
また、喫煙者はnon-smokerよりも優位にT790M変異を発現した。
治療とsurvival analysis
101人のT790M獲得症例のうち、
1人がavitinib臨床試験に登録され、
10人がAZD9291(タグリッソ)
70人が化学療法のみ
20人がBSCとなった。
43人のMETのうち
12人がINC280臨床試験
20人が化学療法のみ
5人がcrizotinib
5人がBSC
TKI治療失敗後、T790M/MET阻害剤にて加療された患者はdel19群で12.3%、L858R群で12.9%だった。
Survival dataは2017年1月時点まで評価を行い、合計で191人が亡くなった。
OS中央値
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T790M
|
36.0か月
|
MET
|
26.5か月
|
組織型転換
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19.7か月
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その他
|
23.0か月
|
T790Mと比較した際のHRはMETで1.809、組織型転換で2.370であった。
年齢、耐性変異、治療は独立した予後因子であった。(図3)
Del19のOS中央値は33.3か月、L858Rは26.4か月、HRは0.721だった。しかしT790M、年齢、EGFR変異サブタイプをadjustした場合、優位な差はなくなった。この結果はdel19の良好なOSはT790Mを獲得した患者の年齢が比較的若かったことが影響している可能性がある。
<discussion>
T790M以外の変異に関しては予後に差がなかった。Del19群の方がT790Mを獲得する割合が多かった。これまでの報告では、T790Mはdel19に発現しやすい傾向が認められており、さらにdel19はAURA,AURA2,AURA3試験(EGFRTKI前治療のあるT790M陽性患者を対象とした試験)でもL858Rより優位に認められていた。
元々の変異タイプによらずT790M獲得患者の予後がいい理由として、その他獲得変異と比較すると悪性度が低い経過を辿るからと考えられる。OxnardとHataは似たような結果をそれぞれ白人・日本人で報告している。
しかしそのメカニズムは未だ不明であり、薬剤への感度が異なること、固有の遺伝子構造的な問題などが考えられている。
結論としては、T790M変異を獲得した患者はその他の耐性メカニズムと比較しよりよい予後となることが分かった。さらに、Del19変異群にてT790Mが多い点を考慮すると、dell19の方が良好な予後となることが推察される。
Limitation:
Retrospectiveな研究。
1-6%はdenovoのT790Mを有している可能性がある。
21.4%が実際にbiopsyされるまでの間に化学療法が行われており、T790M変異に対し変化をもたらした可能性が考えられる。
(担当、まとめ;児玉)
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