昨年10月コペンハーゲンのESMO2016で発表された内容です。2017年6月にPublishされています。改めて、KEYNOTE024との違いを確認しました。
NivolumabはNSCLCに対してのcheckmate017、checkmate057試験でDTXと比較して優位にOS,PFSを延長させることが明らかになり、以降免疫療法の分野は急速に進歩している。
Checkmate012試験(phase1)では20人のNSCLC患者に対しnivolumab単剤を使用した結果を報告している。PD-L1発現が5%以上だった10人の患者のORRは50%、mPFSは10.6か月と報告され、その他論文でもPD-L1低発現患者、発現のない患者でnilovumabの治療効果があったとする報告は散見されている。この事から本論文では閾値をPD-L1発現>5%としてnivolumabを使用した際の効果をopen label、phase3試験として報告する(Checkmate026)
<方法>
対象:StageⅣ、ないし術後再発したNSCLC患者でchemo-naïveなPD-L1発現>1%患者。
PS0-1、評価可能病変を持つ。
脳転移患者は、登録2週前より無症候であることが前提として認められた。
姑息的照射も登録2週前までに終了していれば可能とした。
除外:EGFR,ALK変異陽性、自己免疫疾患の既往のある患者
以上の対象患者に対しNivolumab(3mg/kg/2週)あるいはPtベース化学療法を行った。chemo群からnivolumabへのCrossoverは許可された
PE::PFS
SE:OS, Response rate
【その他】
患者それぞれのMutation-burdenの量を計測し、low(0-100)、medium(100-242)、high(243以上)の3群に分けた。3群間での効果についても検討した。
<結果>
1325人がエントリーされ、うち541人が無作為化された。271人がnivolumab群、270人が化学療法群に分類された。
全体の39%の患者が登録前に照射歴があった。
|
Nivolumab群
|
Chemo群
|
Hazard Ratio
|
Median PFS
|
4.2か月
|
5.9か月
|
1.15
|
Median OS
|
14.4か月
|
13.2か月
|
1.02
|
RR
|
26%
|
33%
|
|
全G AE
|
71%
|
92%
|
|
G3以上 AE
|
18%
|
51%
|
|
治療中断
|
10%
|
13%
|
|
死亡
|
2人(MOFとIP)
|
3人(FN,敗血症)
|
|
Subgroup解析においても明らかにnivolumab群が優位なものは認められなかった。
【mutation burdenの結果】
|
Nivolumab群
|
Chemo群
|
Hazard Ratio
|
High mutation burden群 でのRR
|
47%
|
28%
|
|
High mutation burden群 でのPFS
|
9.7か月
|
5.8か月
|
0.62
|
・OSには優位な差は認められなかったがChemo群の68%がnivolumabへのcrossoverを行っていた。
・mutation burdenとPD-L1>50%の両方を持つ患者群のRRは75%と、片方しか持たない群より明らかによい成績となった。
<考察>
・stageⅣ/再発NSCLCでPD-L1>5%の患者に対する1st line nivolumabはchemotherapy群と比較して優位な差は認められなかった。その理由の一つに患者背景に若干の偏りがありnivolumab群に状態がやや悪い患者が多かった可能性が考えられる(肝metaは20% vs 13%、腫瘍径82mm vs 68mmなど)
・Subgroup解析でPD-L1>50%に対するnivolumab群とchemo群の奏効率はほとんど変わらなかった(34% vs 39%)。従来の報告と異なる結果がでた理由として、本研究のデザインとして50%以上の患者に対する層別化を行っておらず、人数にも若干の偏りがある(32人 vs 47人)ことが挙げられる。
・PD-L1発現>50%とhigh mutation burdenの両方があることはnivolumabの奏効によい因子と考えられている。本研究でも同等の結果が出ているが、あくまでも副次項目であり更なる研究が必要である。
<感想>
1st line nivolumabのchemotherapyに対する優位性を狙った論文だが、結果的にはnegative studyとなった。疑問が残る点として、5%を基準値として試験デザインを行った点であるか。Phase1 Checkmate012試験の20例を元に基準設定したと記述されているが、大規模な試験を行うには理由としては弱いのではないか。PD-L1>50%で優位な結果を出したPembrolizumabとの差別化を図る意図もあったのだろうが、negative studyとなったことで1st lineはpembrolizumab優位な状態が加速していく可能性が考えられる。
(担当;濵元、まとめ:児玉)