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2019年2月13日水曜日

Partial Oral versus Intravenous Antibiotic Treatment of Endocarditis

本日のJournal Clubは、呼吸器内科・井部達也先生に、心内膜炎に対する抗菌薬の一部経口投与と静脈内投与との比較について,最新(2019131日発表)のNEJMの論文の皆での抄読です。
※今回から、抄読会での討議内容をHeadにもってきました。

【抄読会での主な討論】
・感染性心内膜炎は右心系が多いはずであり,その意味でも右心系で既に結果が出ていることから今回の結果も当然の結果と言えそうである.
Limitationsにもあるように,合併症の多い高齢者を除いており,チャンピオンデータを集めている.選択バイアスはそれなりに大きいと言わざるを得ない.
・この結果の通りにガイドラインが改訂されることがあれば,感染性心内膜炎の治療はかなり入院期間が減らせることになる.敗血症としてまずは2週間という先入観も捨てる必要がある.
・このStudyでは菌種を特定しており,耐性菌は除外しているが,血液培養で耐性菌が出た時には内服での抗生物質は非常に高価な薬剤になるので,今回の研究結果がどうであっても医療経済の面でも静脈投与継続が望まれそうだ.

【目的と方法】
左心系感染性心内膜炎患者には一般的に,抗菌薬の静脈内投与が最長 6 週間行われる.状態が安定した時点で静脈内投与から経口にスイッチした場合に,静脈内投与を継続したときと同程度の有効性と安全性が得られるかどうかは不明である.ちなみに,右心系については、すでにこの非劣勢を示す結果があり,この研究では同様の効果について左心系について検証した.この試験は多施設共同無作為化非劣性試験で, 連鎖球菌,Enterococcus faecalis,黄色ブドウ球菌,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)のいずれかによる左心系に感染性心内膜炎を有し,抗菌薬の静脈内投与を受け,弁置換術など手術後7日以上を経過しており,状態が安定している成人 での400 例を,抗菌薬の静脈内投与を継続する群(199 例)と経口投与に切り替える群(201 例)に振り分けて行った.初回に選ばれた1954名からは,Duke基準で多くが除外される結果となった.全例に抗菌薬の静脈内投与が少なくとも 10 日間行われ(中央値17日間)た.経口投与群の患者は可能であれば退院し,外来治療を受けた.プライマリーエンドポイントは,無作為化から抗菌薬投与完了後 6 ヵ月までの全死因死亡,予定外の心臓手術,塞栓イベント,一次病原菌による菌血症の再発の複合と設定された.

【結果と結論】
無作為化後,抗菌薬投与完了までの期間の中央値は静脈内投与群 19 日(四分位範囲 1425),経口投与群 17 日(四分位範囲 1425)であった(P0.48).主要複合転帰は静脈内投与群の 24 例(12.1%)と経口投与群の 18 例(9.0%)で発生し(群間差 3.1 パーセントポイント,95%信頼区間 -3.49.6P0.40),非劣性の基準を満たす結果であった.また、それらの結果は各菌種(連鎖球菌,Enterococcus faecalis,黄色ブドウ球菌,CNS)によっても同様であった。この結果から,合併症を有さずに状態が安定している左心系心内膜炎患者において,抗菌薬の経口投与への変更は,静脈内投与の継続に対して非劣性を示すといえる.Limitationsとしては,合併症を有す高齢者は多く除外されており,実臨床を反映していると言い難いこと,耐性菌での結果を調べていないこと,20%の患者でしかランダム化してそれぞれの群に分けられず,多くは医師の裁量で経口へのスイッチが判断されたこと. また、経口を継続できる条件は下痢などの腹部症状を有さないことなど、ある程度の選択バイアスが生じている可能性がある.

(担当:井部、 まとめ:石井)

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