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2019年2月27日水曜日

Effect of Epicutaneous Immunotherapy vs Placebo on Reaction to Peanut Protein Ingestion Among Children With Peanut Allergy: The PEPITES Randomized Clinical Trial.

本日のJournal Clubは、呼吸器内科・石井尚が、「小児のピーナッツアレルギーに対する表皮免疫療法の効果」について、最新(222日発表)のJAMA掲載論文を発表しました。石井先生は、海外生活が長く、ピーナッツバターに対しての愛情があるのでしょう。今回は、呼吸器疾患とは少し異なります。また、小児対象でした。いろいろな視野で勉強できるのも医学の面白さかもしれません。

【抄読会での主な討論】
・ピーナッツアレルギーは米国の12%の小児にみられるとあるが、日本ではこれよりもかなり高い有病率である。
・米国のように子どもからピーナッツバターに暴露されているか、日本のように主に大人がビールのおつまみとしてピーナッツを食べるかの食文化の違いでこの差が生じているのではないか。
FDAの規制である、responderの変化率の95%信頼区間の下限が15%を超える必要があったというのはやはり厳しすぎるようにも思える。
・小児科の専門医の意見は分からないが、今回の年齢(411歳)であれば経口での脱感作のほうが一般的であり、やりやすいようにも思うのだが。
FundingDBV Technologies (Nasdaq Stock Market: DBVT)というバイオ関連会社であり、このようなパッチを売ることに社運をかけているような雰囲気が実は背景にあるではないか?
・結局はピーナッツパッチを売りたい製薬会社が厳しすぎるFDAの規制を取り崩すための政治活動がこれから起こることを予見している論文とも言えそうだ。
 (担当:石井、 まとめ:石井・濱元)
 【目的と方法】
2011年から2018年の間に実施された多くの研究では、ピーナッツアレルギーが米国の子どもの約1%から2%に見られることを指摘している。ピーナッツアレルギーの現在の標準的な治療法は、抗原であるピーナッツの厳格な回避とアレルギー症状の発現に対するエピネフリンの迅速投与だけだ。 ピーナッツアレルギーは、救急搬送される小児の疾患でも有名で、時に致死的である。経口、舌下、および表皮免疫療法を含む、ピーナッツアレルギーを治療するためのいくつかのアプローチがこれまでに評価されており、なかでも経口免疫療法と舌下免疫療法の両方が十分に説明されているが、皮膚免疫療法についてはあまり知られていない。本研究の目的は、Phase3として、ピーナッツアレルギーを有する411歳の小児におけるピーナッツパッチ療法(250μg用量)の12ヶ月間使用後での有効性および有害事象を評価することであった。 Primary Outcomeは、ベースライン時と12ヶ月時の食物負荷によって決定された誘発用量に基づくピーナッツパッチとプラセボパッチの間のresponderの差であった。FDAのアレルギー脱感作療法の規制を鑑み、レスポンダー率の差を中心とした95CIの下限の15%以上の閾値を、陽性試験結果を決定するために予め設定した。また、本研究はPhase3であり、治療に起因する有害事象(TEAE)の収集がもう一つの研究目的に含まれていた。

【結果と結論】
5か国(米国・豪州・カナダ・ドイツ・アイルランド)の31医療施設で集められ、無作為化された356人の参加者の中で(年齢中央値、7; 61.2%男性)、89.9%が治験を完了した。 平均治療アドヒアランスは98.5%であった。 12か月後に誘発容量が増加したresponderの発生率は、ピーナッツパッチで35.3%、プラセボで13.6%であった(差、21.7[95CI12.4-29.8; P < 0.001])。 事前に指定されたCI敷居値の下限(15%)が満たされない結果であった。 TEAEは主にパッチ貼り付け部位の皮膚所見として起こり、それぞれピーナッツパッチ群で95.4%およびプラセボ群で89%であった。 全原因での中止率は、ピーナッツパッチ群で10.5%、プラセボ群で9.3%であった。全身性アレルギー反応はまれであり、重篤なものは一切なかった。 アナフィラキシーショックとピーナッツパッチとの関連性は、124時間常に装着されている状況では難しい判断であったが、8人の参加者に10回のアナフィラキシー反応が見られ、そのうちの5回がピーナッツパッチとある程度の関連があると結論付けられた。結果をまとめると、411 歳のピーナッツアレルギーの小児では、12ヵ月時点のresponderの発生率でのピーナッツパッチ療法とプラセボ投与率の差は21.7%であり、統計的に有意であったが、所定の下限を満たしていなかった。 皮膚外免疫療法によるピーナッツアレルギーの小児の治療に関して信頼区間のこの厳しすぎる下限(15%以上)を満たさないことが臨床的に有意義であるのかは極めて不透明である。 この研究のLimitationsとして、 第一に、95CI下限マージンを満たさなかったが、そのことと臨床的意義の関係が不明であること。第二に、低誘発用量サブグループの参加者数が、Phase2試験で観察された分布に基づく予想された30%より少なく、結果に影響を与える可能性があること。第三に、この研究では、ピーナッツに対する重篤な生命を脅かすアナフィラキシーの既往歴のある参加者を除外したが、このことが有害事象とピーナッツパッチの許容性を評価する二次的結果を含む研究結果に影響を与えた可能性があること。第四に、皮膚反応は目に見える形で起こるため、このことで験者に猜疑心を呼び、完全な2重盲検化が不可能であった可能性があること。(ただし、これらの多くの皮膚反応はピーナッツ蛋白に対してだけではなく、単に接着剤によるものであったともいえる。)第五に、試験期間は12ヶ月であり、期間が短すぎた可能性もあることなどが挙げられる。結論 としては、411歳のピーナッツアレルギーの小児では、250μgピーナッツパッチ療法群とプラセボ群の12ヵ月時点でのresponderの発生割合の差は21.7%で統計的に有意であったが、信頼区間の所定の下限を満たさなかった。