結論として、救急診察の際、PCTを計測しても抗生剤のチョイスや投与期間に影響ないことがわかった。軽症が多いのか、PCT値が低い患者が80%弱であったのが原因か?
<背景>
抗菌薬の過使用は医療費増大・耐性菌の増加などの様々な問題を含む。
プロカルシトニンは感染の重症度、治療反応性を持ち、いくつかの論文によるとプロカルシトニンを使用することで抗菌薬の使用を減少させることができると報告されている。2017年にはFDAが抗菌薬開始・中止基準として認可している。しかし、その実際の有効性は未だ不明な点が多い。その効果としては論文によって異なり、利点が大きいとするものや、日常使用に大きな問題がないとするものまで様々である。
今回は、多施設共同研究により実際にプロカルシトニンが抗菌薬の使用を削減させることができるかを検討した。
<方法>
アメリカの14施設にて、下気道感染の疑いのある患者を1:1に割り付けた。
プロカルシトニン群:プロカルシトニンを計測し、その結果を主治医へ伝え、治療の参考とする。
通常群:計測するものの、それを主治医へ伝えない。
対象:
18歳以上の救命科受診した患者のなかで、初期診断として下気道感染症と診断された患者。
下気道感染症の内訳としてはCOPD急性増悪、喘息発作、急性気管支炎、市中肺炎、その他、に分類した。
プロカルシトニン値は入院直後および6時間後、24時間後、3,5,7日後に計測を行った。
PE: 最終的な抗菌薬の使用量(30日間での抗菌薬使用日数)
<結果>
1664人の患者が登録され、最終的に826人がプロカルシトニン群、830人が通常群として割り付けられた。ベースラインに関しては偏りがなかった。
プロカルシトニンレベル(両群)
<0.1µg :1236/1596人(77.4%)
0.1µg-0.25µg : 230/1596人(14.4%)
0.25µg-0.5µg :50/1596人(3.1%)
>0/5µg :80/1596人(5.0%)
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プロカルシトニン群
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通常群
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P
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抗生剤使用期間
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4.2日
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4.3日
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0.87
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抗生剤使用率
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57.0%
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61.8%
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入院患者の抗菌薬使用期間(平均)
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2.6日
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2.7日
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救急外来での抗菌薬処方率
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34.1%
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38.7%
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<考察>
この多施設研究試験ではプロカルシトニンの使用による抗菌薬処方の検討は、抗菌薬の使用頻度に大きな影響を与えなかった。その理由として、臨床医がプロカルシトニンのレベルを知らなかったとしても、低値の患者に対しては元々高プロカルシトニン値の患者よりも抗菌薬を使用しないパターンが多かったことが示唆される。またプロカルシトニン低値の患者は臨床症状も乏しいことが多く、プロカルシトニンに頼らずして決断が出来たことも一因として考えられる。
従来の試験と反対の結果が出た理由に、肺炎が多く含まれていたことなどが考えられる。
通常群において抗菌薬を適切に使用していなかった可能性も考えられるが、重症化・臓器不全などの頻度が両群で変わらなかった事から、臨床医はプロカルシトニンを使用せずも抗菌薬の適切な使用ができている率が高いと考える。
Limitation:プロカルシトニン値は基本的に抗菌薬投与前に迅速に伝えられたものの、すべてのケースで間に合ったわけではない点。
実際に処方する医師の判断に任されている部分が多い点。
中途脱落がいる点などが挙げれらていた。
(担当;濵元、まとめ:児玉)
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