井部先生が担当で、台湾からのAURA試験についてのまとめです。遺伝子変異のシェダー群がより予後が良さそうだという報告でした。
<背景>
OsimerutinibはAURA試験で承認された第3世代のEGFRTKIである。OsimerutinibはNSCLCでEGFRTKIの前治療を行った後T790M耐性を獲得した患者に対し、高い抗腫瘍効果を持つ。いくつかの論文ではosimerutinibへの耐性機序としてKRAS,BRAF,MET,HER2,C797Sなどの遺伝子変異があることを報告している。また、AURA試験では血漿中にT790M変異やEGFR activating mutation(del 19、L858Rなど)がある場合、osimerutinibが有効であることを報告している。しかし実際に何が有効かははっきりしていない部分もありOsimerutinib耐性腫瘍に関して、組織・血漿中の遺伝子学的な特徴の研究が現在必要とされている。今回我々はAURA試験におけるT790M耐性を獲得したNSCLC患者の臨床学的な予後を評価した。
<方法>
対象:
AURA試験に登録された患者のうちNational Taiwan University
Hospitalで登録された患者。EGFRTKIの前治療があり、Osimerutinib投与前よりT790M耐性化した組織ないし血漿が証明されたもの。
Osimerutinibの量は20,40,60,80,160,240mgを毎日投与された。
すべての患者から血漿サンプルを、投与前・投与中6週間おき・PD時点、で採取した。
Shedder:血漿中にEGFR activating mutationが確認できた患者
⇒血漿中Activating mutation(+)でT790M(+)ないし(-)
Non Shedder:血漿中にEGFR activating mutationがない患者
⇒Activating mutation(-)、T790M(-)
<結果>
AURA試験の73人の患者のうち、53人がTKI全治療を行ったのちT790Mが発現していた。
前治療数の中央値は5。
Osimertinibの治療で、26人(49%)は1か月以上投与継続した(中央値5.6か月)。14人は当研究時点で存命していた。
Osimertinib投与前
血漿中
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人数
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EGFR activating mutation(-)
⇒nonshedder
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13人(25%)
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shedder
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40人(75%)
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Shedder中T790M陽性患者
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34人(85%)
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Osimertinib投与後PD ⇒40人(53人中)
血漿中
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人数
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表現型が変化しなかった患者
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21人/40人
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Nonshedder⇒不変
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6人/8人(75%)
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Shedder⇒同じshedder
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15人/32人(46%)
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A+T+ ⇒ A+T+
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12人/26人
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A+T- ⇒ A+T-
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3人/6人
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表現型が変化した患者
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19人/40人
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Shedder⇒表現型が変化したshedder
(A+T+⇒A+T- or non-shedder)
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11人/26人
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Nonshedder⇒shedder
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2人/8人
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Shedder⇒non-shedderへ変化
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6人/32人(19%)
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全患者
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nonshedder
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Shedder
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P
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Median
PFS
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11.1か月
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15.4か月
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9.4か月
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0.055
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Median
OS
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16.9か月
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36.5か月
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13.5か月
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0.0157
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CNSmetaがshedder/non-shedderでバランスがとれていなかったため、脳転移なしの患者のみでも予後を比較した。
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nonshedder
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Shedder
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P
|
Median
PFS
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15.4か月
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12.4か月
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0.26
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Median
OS
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36.5か月
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19.8か月
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0.089
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さらに、
T790M消失群 11人
治療後nonshedder群 12人
新規shedder/shedder維持群 17人
で分けて予後を評価した。
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T790M消失群
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治療後nonshedder群
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新規/維持群
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PFS
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2.6か月
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11.1か月
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12.6か月
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PD後予後中央値
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5.0か月
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10.8か月
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5.0か月
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OS中央値
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9.3か月
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22.4か月
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15.4か月
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増悪時、EGFR activating mutationが血漿中に認められない患者の方がshedder群と比較してより長い予後であった。
<考察>
今回の研究の結果、EGFR activating mutationが血漿中に漏れ出ているshedderの群の方が、non-shedder群と比較してPFS,OS共に増悪する傾向があった。特にshedder群からnon-shedder群へと変化し多場合、OSがより良好になると考えられた。更に、今回の試験の結果shedder群でT790M+だった患者で、投与後T790M-となった群が最も短いPFSとなることが分かった。一方、我々はtriple EGFR mutation(EGFR
activating mutation+T790M+C797S)が予後が良好になることを発見し多。いずれも対象患者数が多くないため、今後より大人数での試験が必要と考えられる。
Limitation:
患者数
PD後に血症サンプルを取れなかった患者がいる点
多くの前治療が行われている点
集団が均一でない点
(担当:井部、まとめ:児玉)
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