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2018年1月10日水曜日

Enteral versus parenteral early nutrition in ventilated adults with shock: a randomised, controlled, multicentre, open-label, parallel-group study (NUTRIREA-2)

2018年初回の抄読会は、薬剤の福田先生からです。
興味深い論文を読んでくれました。経腸栄養がいいのか、経静脈栄養が良いのかです。
議論のあるところで、実際に臨床に生かせるかが、少し疑問に残りました。
 本日から、看護大学大学院生(桜田さん、山林さん)と薬剤学生(澤田さん、志戸さん)が参加してくれています。
一緒に勉強継続していきましょう!
<背景>


人工呼吸期を使用するような急性重症患者はしばしば重度の低栄養となるリスクを抱えており、その結果感染・筋委縮・回復の遅れ、そして死亡率の上昇につながると考えられる。ガイドライン静は20-25kcal.kg/dayの経腸栄養を推奨しているものの、その効果についてははっきりした証拠がない。また早期より開始することに関し手はガイドライン上ではショックからの離脱を行った後を推奨しているものの、多くの報告より早期栄養開始の方が予後が良好になるとされている。我々は早期の経腸栄養が静脈栄養と比較して良好な予後となることを想定して今回の研究を開始した。
<方法>
フランスの44施設のICUでのopen-label、ランダム化試験。

対象:18歳以上で48時間以上の人工呼吸管理とCVからの昇圧剤が必要と考えられた患者
除外:消化器疾患の患者、呼吸期装着から24時間以上たっている患者、消化器系の手術既往のある患者、妊婦・授乳中、など

上記患者に対し、挿管後24時間以内に栄養を開始した
経腸栄養と頸静脈栄養群に1:1に割り付けられた。(試験デザインの都合上二重盲検試験にはできず)
どちらの群も最初の7日間は20-25kcal/dayの栄養、8日目以降は25-30kcal/dayの栄養を投与された

PE28日時点での死亡率
SESOFA score、嘔気・下痢、ICU関連感染症、90日時点での死亡率、など

<結果>
2回目の中間解析の時点で、第3者機関よりこれ以上の試験遂行が結果に影響しない都判断し、試験は中途中止となった。

中止までに計10885人が登録され、うち2410人が2群に割り付けられた。


経腸栄養群
頸静脈栄養群
P
28日死亡率
443/1202(37%)
422/1208(35%)
0.33
90日死亡率
530/1185(45%)
507/1192(43%)
0.28
ICU関連感染
173/1202(14%)
194/1208(16%)
0.25
嘔気
406/1202(34%)
246/1208(24%)
<0.00001
下痢
432/1202(36%)
393/1208(33%)
0.009

<考察>
28日時点での死亡率は両群において有意差を認めなかった。頸静脈投与群と比較して経腸管栄養群は蛋白のintakeが低く、また低血糖の頻度が高く、消化管的副作用が大きく出た。
本研究の前に報告されたCALORIES試験でも本研究動揺に30日死亡率、感染合併頻度などには差がなく、消化管合併症が多かったことを報告されている。
結論として、重症患者における早期栄養投与の方法として、経腸栄養は頸静脈栄養と有意差がないことがしめされた。

Limitation
二重盲検試験にはなっていない
早期中止となっており、長期での副作用や効果に関しては不明である。

<感想>

現在の重症患者への栄養投与方法は、「早期」「経腸」での栄養が主流となっている。その利点として、腸管粘膜の維持やbacterial translocationの防止、胆汁うっ滞の回避、感染性の低さ、などがいわれている。また、一般的にGFOなどの「薄い」製剤より開始し、徐々にカロリーを挙げることで下痢などの合併症を回避することとなっている。本研究で疑問が残るのは、挿管後早期より20-25kcal/kg/dayの濃い栄養を開始している点である。下痢の合併症の多さは濃い栄養より開始したことによる副作用と考えれば一般臨床と本研究の結果は一致しないとも考えられる(特に、頻回の下痢から感染を起こす可能性もあり、死亡率にも影響すとも考えられる
 LancetへPublishされたからと言って、そのまま臨床に適応するかというとそうではない論文なのかもしれない。症例の多いことでIFの高い論文への掲載となったのかもしれない。
(担当:福田、まとめ:児玉)

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