今回は薬剤科の大越先生が担当で、AMAZES試験について解説してくれました。
<背景>
喘息は世界的な慢性疾患であり、世界で5千万人の人が中~重度のコントロール不良と推定されている。喘息の気道炎症反応は主に好酸球性炎症が典型的だが、好中球生炎症など非好酸球性の表現型も比較的多く認められており、これらは吸入ステロイドに対し反応性が異なる。一方マクロライド抗生物質は抗菌性のほか、好酸球・非好酸球性の抗炎症作用がさることが知られている。喘息に対する有効性に関して、レビューは報告されているものの、増悪を含む他のエンドポイントについては結論が出ていない。今回アジスロマイシンを使用することで喘息の悪化を軽減し、QOLを改善するかを多施設無作為化二重盲検法にて検証した。
<方法>
無作為割り付けを行った2群に対しアジスロマイシン500mgを週3回内服する群と、プラセボ内服群とに分け、48週間期間中6週おきに効果判定を行った。
対象:18歳以上、QT延長・聴覚障害などの症状がないこと、ICS・LABAにてコントロールが不良(持続的な症候性喘息を有している)
除外:10pack-years以上の喫煙歴があり、DLCOにて予測値<70%の拡散障害のある患者
PE:48週間以内の中~重度の喘息発作の割合。QOL
SE:ACQ6 score、肺機能、誘発喀痰の細胞数、呼吸器感染症発症率、AE
※ACQ6score…日中/夜間の症状・レスキューとしてのSABA使用などを0-6段階のスケールとしたもの。
さらに、炎症性の表現型について、痰中の好酸球>3%ないし血中好酸球数≧300/μLの場合を好酸球性炎症、それ以外を非好酸球性とした。
<結果>
計582人の患者がスクリーニングされ、最終的に213人がアジスロマイシン群、207人がプラセボ群として観察終了した。
アジスロマイシン群
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プラセボ群
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HR
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増悪回数
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1.07回/年
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1.86回/年
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0.59
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重度喘息増悪
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0.61回/年
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1.07回/年
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増悪した患者の割合
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94人(44%)
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127人(61%)
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AQLQ平均値
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5.73
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5.55
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AE
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16人(8%)
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26人(13%)
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P=0.27
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下痢(AE)
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72人(34%)
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39人(19%)
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P=0.001
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<考察>
本研究により経口アジスロマイシン500mgを週3回内服することで喘息増悪の頻度の減少および喘息関連のQOLが改善することが分かった。また、アジスロマイシン内服群では呼吸期感染症の罹患率も減少が認められた。AEとして下痢がプラセボ群と比較して優位に出現したものの、重症化する例は少なく許容範囲内と考えられた。
以前報告されたAZISAST試験ではアジスロマイシン250mgを週3回内服して効果を比較しているが、この時は優位な結果とはならなかった。しかしサブグループ解析にて非好酸球性喘息群では重度の喘息増悪が減少したという結果になっている。本研究ではAZISAST試験より高容量、かつ大人数・長期間にて試験を行った。
患者と地域社会に対し、喘息の悪化は大きな影響を及ぼし、維持療法でも症状が残存する患者に対しアジスロマイシンを追加することは患者に対し大きな影響を与えると考えられた一方で微生物の抗菌薬耐性に関しては、より長期的な評価が必要である。
(担当:大越、まとめ:児玉)
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