本日は、薬剤の福田先生が担当してもらいました。
呼吸器・内科を基礎とした抄読会で、他部門が集まり継続しています。そのため、自分たちの気がつかないテーマがでてくることに大変ありがたく感じます。
さて、今日のテーマは・・・
<背景>
急性咽頭痛は外来ではよく見ることのある症状であるが、イギリスではその60%に抗菌薬が使用されている。こういった現状を打破するため、症状緩和ができる新たな方法が必要である。経口デキサメタゾンは気道の上皮細胞への炎症メディエーターの移行を抑制し、上咽頭に対するよい影響をもたらすことができる。短期間の経口ステロイドであれば安全であり、副作用も少ないとされている。いくつかの症例報告で、ステロイド内服にて3倍近くの患者が24時間以内に症状緩和されたとされているものの、その証拠は未だ不足している。
本研究はステロイド投与による効果を確認することとした。
<方法>
対象:18歳以上の即時抗菌薬投与を必要としない急性咽頭症状のある患者
除外:1か月以内の吸入/経口ステロイド内服者、14日以内の抗菌薬使用者、肺炎などの明確な他疾患の併存
PE:14時間以内の症状の緩和
SE:①48時間以内の症状緩和、②症状継続の期間、③患者の自覚症状の報告など
・デキサメタゾン投与群は10mg/dayの内服を1日のみ行った。
・溶連菌の検査は行われていない。
・48時間以内に症状の改善を認めなかった患者に対しては自信の判断で抗菌薬の内服が許可された。
<結果>
691人が登録され、うち115人が除外された。293人がデキサメタゾン投与群、283人がプラセボ群となり、最終的には288人、277人がそれぞれ対象とされた。
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デキサメタゾン群
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プラセボ群
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P
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24時間以内の症状緩和
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22.6%(65/288)
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17.7%(49/277)
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0.14
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48時間以内の症状緩和
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35.4%(102/288)
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27.1%(75/277)
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0.03
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SEはいずれも優位な差を認めなかった。
観察期間に3人(プラセボ2人、デキサメタゾン1人)が入院加療を必要とした。
<考察>
即時抗菌薬投与が必要でないと判断された患者に対してデキサメタゾンを投与した際、24時間以内の症状緩和には明らかな効果を認めなかったものの48時間以内の症状緩和には明らかな有意差を認めた。
SEとしていた症状緩和までの期間、症状の主観的評価などに関しては、明らかな有意差を認めなかった。
想定よりも効果が低かった理由としては、これまでの報告では抗菌薬の併用投与が行われていたのに対し本研究では行っておらず、抗菌薬とのシナジー効果がなかった点などが考えられる。また、今回抗菌薬を使用しない前提で患者を集めたため、重症な患者などは除外されており、こういった患者に対しての高炎症作用を持つステロイドは有効性が上がる可能性も考えられる。
Limitation:
子供・重傷者を除外している点
<感想>
デキサメタゾン10mgの高容量ステロイド内服による咽頭痛への効果をみる試験だが、本文通り24時間以内ではプラセボとほぼ同等という結果となった。すぐ良くしたい患者のニーズを考えると使いづらい結果となった。その他の咽頭痛に対して使用するトラネキサム酸や桔梗湯も明確なエビデンスはないが、外来で比較的よく使用されるのであれば是非これらとの比較試験を行ってほしかった。
(担当:福田、まとめ:児玉)