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2019年4月3日水曜日

Smartphone-enabled video-observed versus directly observed treatment for tuberculosis: a multicentre, analyst-blinded, randomised, controlled superiority trial.

本日のJournal Clubは,薬剤部大越氏に「活動性結核患者226例を対象に、スマートフォンで撮影した動画による服薬確認と対面による直接服薬確認の効果を多施設共同無作為化比較優越性試験」で検証した,最新(2019年221日発表)のThe LANCET掲載論文を発表です。
(今回のJournal Club Up遅れましてすみませんでした:by Hamamoto 4/11)

【抄読会での主な討論】
NYC(ニューヨーク市)ではDOTが非常に効果を上げ、結核の撲滅に近い結果を得たことが有名だが、さらに時代は流れている印象を与える記事だ。
DOT群では80%以上の治療監視を行えた人が低すぎる(31%)・
・その理由としては、Limitationsにもあるが、一方にはファンシーなデバイス(Smart Phone)が与えられて、与えられなかった人達のやる気をなくした可能性もあるのでは。
・貧困などの問題を抱える人にスマホを貸し与えて、不正利用や回収できなかったケースなどはどれくらいあったのだろうか→基本回収して、次の患者への使用している。
DOTナースは大変。電話や訪問での人海戦術であり、主に定年後のナースなどが行っている地味な業界だ。
・日本の一部の都市のように、DOTを薬局でやることは非常に理にかなっているサービスだ。
(担当:大越、まとめ:石井)


【目的と方法】
 直接監視下治療(DOT)は、1990年代初頭から結核の標準治療とされるが、患者や医療サービス提供者にとってはとても煩雑である。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン校のAlistair Story氏らは、スマートフォンを利用するビデオ監視下治療(VOT)はDOTよりも有効であり、簡便で安価な結核治療の監視アプローチであることを示した。WHOは、2017年、DOTの代替法としてVOTを条件付きで推奨したが、無作為化対照比較試験がほとんどないためエビデンスのグレードは低いという。本研究は、VOTDOTに対する優越性の検証を目的とする解析者盲検無作為化対照比較試験であり、20149月~201610月の期間に英国国立健康研究所[NIHR]の助成により、英国の22の多施設で患者登録が行われた。対象は、年齢16歳以上、肺または肺外の活動性結核に罹患し、各施設の規定でDOTが適格と判定された患者であった。スマートフォンの充電設備がない患者は除外された。参加者は、VOT(毎日、スマートフォンのアプリケーションを用いて遠隔監視を行う治療)またはDOT(週に35回、自宅、地域[薬局など]または診療所で直接監視下に行う治療)を受ける群に無作為に割り付けられた。DOTでは、医療従事者などが治療の監視を行い、患者は毎日、自分で薬剤を投与した。VOTは、ロンドンからの集中型の医療サービスにより提供された。
VOTでは、患者が動画を撮影して送信し、研修を受けた治療監視者が、パスワードで保護されたウェブサイトを介してこれらの動画を評価した。また、患者は、動画で薬剤の有害事象を報告するよう奨励された。スマートフォンとデータプランは担当医から無料で提供された。
プライマリーアウトカムは、試験登録から2ヵ月の期間における予定された治療監視の80%以上の完遂とした。intention-to-treatITT)解析および限定解析(1週間以上の監視が行われた患者のみを含む)を行った。優位性は、主要転帰を有する患者の割合の15%の差によって決定された。

【結果と結論】

201491日から2016101日まで、226例が登録され、VOT群に112例、DOT群には114例が割り付けられた。全体として、英国以外の国で出生した若年成人が多かった。また、ホームレス、禁固刑、薬物使用、アルコールや精神的健康の問題の経歴を持つ患者の割合が高かった。
1週間以上の監視を完遂した患者は、VOT群が101例(90%)と、DOT群の56例(49%)に比べ、すでに多かった。ITT解析では、2ヵ月間に予定された治療監視の80%以上を完遂した患者の割合は、VOT群が70%(78/112例)と、DOT群の31%(35/114例)に比べ有意に良好であった(補正後オッズ比[OR]5.4895%信頼区間[CI]3.109.68p0.0001)。
限定解析でも、80%以上を完遂した患者は、VOT群が77%(78/101例)であり、DOT群の63%(35/56例)と比較して有意に優れた(補正後OR2.5295CI1.175.54p0.017)。
VOT群は、試験期間を通じて80%以上の完遂率が高い状態が継続したが、DOT群は急速に低下した。
また、最長6ヵ月の全フォローアップ期間における予定監視の完遂率は、VOT群が77%(12,422/16,230件)であったのに対し、DOT群は39%(3,884/9,882件)と、有意な差が認められた(p0.0001)。限定解析でも、VOT群が有意に良好だった(83 vs.61%、p0.0001)。有害事象は、VOT群の32例から368件、DOT群の15例から184件が報告された。両群とも胃痛・悪心・嘔吐の頻度が高く、VOT群で16例(14%)、DOT群では9例(8%)に認められた。1回の投与に要する時間は、医療サービス提供者および患者ともVOT群のほうが短く、患者1例当たりの6ヵ月間の費用はVOT群のほうが低額であった。VOTDOTよりも治療観察に有効であった。VOTは、さまざまな状況にある多くの患者にとってDOTよりも好ましく、薬剤投与の監視において受け入れやすく有効であり、より安価な選択肢となる可能性がある。Limitationsとしては、実際にデバイスが配布されるため、参加者たちに対して盲検化することが出来なかったことや、VOTの映像が一部破損していたこと、多剤耐性結核を除外したことなどである。さらに一番重要なのは、アドヒアランスの改善を示すことは出来たが、培養移行率、治療完了、追跡不能、再発、または薬剤耐性の発現などについてはこの結果だけでは何も言えないことだ。



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