本日のJournal Clubは,呼吸器内科部長・濵元陽一郎先生に「IMpower150の主要サブ解析:EGFR陽性例またはベースライン時に肝転移を有する症例でのABPC療法の有効性」を検証した,最新(本年3月25日発表)のThe Lancet掲載論文を発表していただきました.
昨年6月にNEJMにて公表されたIMpower150は児玉先生がJournal Clubで解説してくれたもので、その後のサブ解析の報告です。
(担当;濵元、まとめ:石井)
【目的と方法】
IMpower150試験とは、IMpower150は、世界26カ国、240の病院で行われた、無作為化・非盲検の第III相試験である。化学療法未治療の非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)に対して、
①アテゾリズマブ+ベバシズマブ+カルボプラチン
+パクリタキセル+ベバシズマブ併用療法(ABCP療法)
②ベバシズマブ+カルボプラチン+パクリタキセル(BCP療法)
の2群での比較をしめしたものである。
化学療法未治療の非小細胞肺癌患者での、(ABCP療法)と、現在のNSCLC標準治療であるBCP療法とを比較した国際共同第III相臨床試験である。結果は、プライマリーアウトカムとして、ABPC療法が無増悪生存期間 (PFS)および全生存期間 (OS)において有意な改善を示した(NEJM)。そのサブ解析である本論文では、さらに、主要な患者サブグループにおけるBCPに対する、ABCPまたはアテゾリズマブ + カルボプラチン + パクリタキセル(ACP)の有効性が報告されている。化学療法治療歴のない転移性NSCLC患者が、3週間ごとにABCP、ACP、またはBCPを受けるように1:1:1に無作為に割り付けられた。プライマリーアウトカムは、Wild type(EGFRまたはALK遺伝子変異を有する患者は除外)における、全生存期間 (OS)および医師評価による無増悪生存期間 (PFS)であった。また、本研究では、
チロシンキナーゼ阻害剤による治療歴のあるEGFR突然変異を有する患者、および肝転移を有する患者、を含むIntention-to-treat (IIT)集団内の重要なサブグループにおいて有効性を評価した。
【結果と結論】
2015年3月31日から2016年12月30日までの間に、1202人の患者が登録された。 無作為に、ABCPに400人の患者、402人をACP、そしてBCPへ400人をに割り当てられた。 EGFR陽性患者(1202人中124人)では、全生存期間中央値はABCPでは未達(34/400)(NE;95%CI 17.0-NE)、BCP群では18.7ヶ月(95%CI 13.4-NE)(45/400, HR0.61)であった。全生存期間の改善は、sensitive EGFR mutationを有する患者で、ABCP対BCPに認められました
全生存期間中央値
ABCP群 NE [95%CI NE – NE]
対
BCP群 17.5ヶ月[95%CI 11.7-NE] ; HR 0.31
[95%CI 0.11–0.83]
およびIntention-to-treatの集団では、
ABCP群 19.8ヶ月[17.4–24.2]
Vs
BCP群 14.9か月[13.4–17.1] ; HR 0.76 [0.63–0.93]
全生存期間の中央値(ベースラインの肝転移を有する患者 )
ABCP群 13.3月[11. 6
-NE] 52/400
vs
BCP群 9.4月[7.9–11.7] 57/400 ; HR 0.52 [0.33–0.82]
全生存期間の中央値(EGFR陽性患者)
BCP群 18.7ヶ月 ( 95%CI 13.4-NE)
vs
ACP群 21.4ヶ月 (95%CI
13.8-NE) ;HR
0.93 [95%] CI 0.51–1.68]
Sensitizing EGFR mutationを有する患者(HR0.90 [95%CI0.47-1.74])では、ACPとBCPの全生存期間の恩恵は見られませんでした(HR0.85 [0.71-1.03])。またはベースラインの肝転移を認める患者(HR 0.87
[0.57–1.32])も同様でした。
安全性評価可能集団において、
グレード3〜4の治療関連事象が
ABCP群の223人(57%)
ACP群の172人(43%)
BCP群の191人(49%)に発生。
グレード5の有害事象
ABCP群ので11人(3%)
ACP群の4人(1%)
BCP群の9人(2%)で発生。
【抄読会での主な討論】
・ペンブロリズマブがNSCLCの免疫チェックポイント阻害剤の分野で一強になりつつあるからこそ、この様に条件を付けての他のICI薬剤の優位性を示す臨床試験の結果がでてくるのであろう。
・費用対効果的なことはこの論文では触れられていない。もしそれらを出すならば、費用は現実的で総数としての医療費として数字に出るが、効果とはいったい何になるであるか?
・医療経済についての効果的な概念としては、生存期間とQOLを併せたもの、「QALY(Quality Adjusted Life Years:. 質調整生存年)・」などの効用値を用いることがある。Paclitaxcel使用での試験のため比較的安価かもしれないが、アバスチン開始時期の頃の医療費の議論が少ない印象を感じるのは、我々だけであろうか?
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