今回は、昨年(2017年)12月にPublishされたNEJMからです。Hokusai VTE trialでは、サブ解析でがん患者がにとって、Edoxaban(リクシアナ)がよい傾向にありました。今回は、Hokusai VTE Cancer trialとして、悪性疾患患者を対象に行われた比較試験です。この試験は、悪性疾患を扱う先生にとっては、EBMとしては重要です。
<背景>
これまでの報告で痰がん患者の血栓症は低分子ヘパリンにて再発率を低減させられることが分かっている。従ってガイドライン静では低分子ヘパリンの使用を推奨している。しかし、この治療法が6か月以上に渡り効果があるかはわかっていない。DOACは血栓に対する効果的な治療法であり、大出血の頻度も少ない経口投与薬である。しかしこれが低分子ヘパリンと比較して優れるのかはわかっていない。今回Hokusai VTE Cancer trialとしてエドキサバンとダルテパリンをヘパリンと比較した。
(担当:濵元、まとめ:児玉)
<方法>
対象:
・DVTが膝窩・大腿・腸骨・大静脈にある患者、急性のPEを伴う患者で、内科医が低分子ヘパリンの使用を検討する症例
・2年以内に診断された担癌患者である
登録された患者は1:1でエドキサバン群とダルテパリン群とに割り付けられた。
エドキサバンは低分子ヘパリンにより5日間治療されたのちから開始となった。60mg/日を毎日経口投与とし、CCrが30-50の場合、体重60kg以下の場合などは投与量を30mgに減量とした。
ダルテパリンは200IU/kg/日を30日間投与とした(最大18000IU/日)。その後は150IU/日で継続投与とした。血小板値が10000≦となった場合、投与量を減量とした。
全ての患者において、エドキサバン、ダルテパリン共に6-12か月の継続とした。
PE:DVTの再発、あるいは大出血、血栓の関係が否定できない死亡など
<結果>
13か国、114施設1050人の患者が登録された。
|
エドキサバン
|
ダルテパリン
|
HR
|
DVT,大出血
|
67/552 (12.8%)
|
71/524 (13.5%)
|
0.97
|
出血
|
36/552 (6.9%)
|
21/524 (4.0%)
|
0.04
|
Subgroup解析では、消化器ガンの場合、エドキサバンでより出血のリスクが高い傾向にあった。
増悪イベントとしては、癌の増悪と肺炎が最も多かったが2群間で有意差を認めなかった。
<discussion>
本研究により、エドキサバンの経口投与はダルテパリン皮下注と比較して血栓の再発・大出血のリスクの面で非劣勢であることが証明された。また、DVTの再発率に限れば、エドキサバンはダルテパリンよりも頻度が少なかった。一方で大出血の頻度はエドキサバンの方が高く、これは消化器ガンに伴う上部消化管出血が多かったことが理由と考えられる。
重大な出血の頻度は両群で差がなかった。
Limitation:
Open-label試験であること。
治療期間の中央値がダルテパリンよりもエドキサバンの方が長かった。
0 件のコメント:
コメントを投稿