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2017年5月31日水曜日

Randomised phase III trial of S-1 versus capecitabine in the first-line treatment of metastatic colorectal cancer: SALTO study by the Dutch Colorectal Cancer Group.

Randomised phase III trial of S-1 versus capecitabine in the first-line treatment of metastatic colorectal cancer: SALTO study by the Dutch Colorectal Cancer Group.

本日は、薬剤部の福田先生の代理で薬学の学生田代さんが抄読会を担当してくれました。呼吸器・内科全般の抄読会ですが、大腸癌の化学療法についてでした。大変勉強になったので、ある程度範囲は決めなくてもいいのかもと、考えさせられた抄読会でした。



<背景>
Capecitabineの主要な副作用として手足症候群(HFS)が有名である。S-1は消化管癌に対して使用される経口フルオロピリミジンであり、Capecitabineとほぼ同様の効果を持ち、アジア人に対してはCapecitabineよりもHFS出現率が低いと報告されている。本研究は転移性直腸がんのある欧米人患者に対し1st lineとしてCapecitabineS-1を使用した際のHFS出現率を比較した。

<患者背景、目的>
オランダ27施設研究161人を対象とした
18歳以上、PS0-2、肝腎・骨髄機能低下がない1st line患者を対象とした。
・除外基準
6か月以内にその他治療を行っている場合
腫瘍縮小後に根治的治療を予定している
過去5年に他の悪性腫瘍に罹患している
Capecitabineに対し抵抗性が示されている
循環器疾患を有している

治療:Capecitabine(70歳以下1250mg/m270以上1000mg/m2day1-14) あるいは
S-1(30mg/m2 day1-14)にて加療、Bevacizumabの併用は許容された。
患者の拒否、PD、毒性が強く継続不可、となるまで3週間おきに継続された。

<評価>
3週間おきにNational Cancer Institute Common Toxicity Critera(NCI CTC)を使用し毒性を評価、9週間おきにCTにて効果を評価した。更に患者に日記を義務付け、それを元に言及されていない副作用を確認した。

PEHFS (grade)
SEG3 HFSRDIPFSRROS

<結果>
gradeHFS出現率はcaptcitabine73%S-145%であった。Grade 3以上はそれぞれ21% 4%であった。特にG2-3の頻度はcapecitabineで多く、投与2-3か月後での出現が多かった。Bevacizumabcapecitabineの併用療法ではHFSの出現がやや多かったものの、優位な差とはならなかった。その他のAEとしてはS-1療法では下痢の出現頻度がより多かった。
中央値20.2か月のフォローの後、capecitabine群では90%S-1群では88%の患者がPDあるいは死亡した。PFScapecitabine8.2か月、S-18.4か月であった。Capecitabine/S-1Bevacizumabの併用群でのPFS8.7か月、単独群では6.6か月であった。12か月/18か月後のOScapecitabine67%/50%S-162%/41%PFS,OS,RRに関しては優位な差は認めなかった。

<考察>
消化器悪性腫瘍に対して外来化学療法を行う際はXELOX,SOXが主流であるが、XELOXHFSの出現頻度が多いことが以前から知られていた。HFSの原因物質としては代謝産物であるα-fluoro-β-alanine(FBAL)が知られているが、S-1capecitabineと比較して1/18程度のFBAL濃度であり、これが遠因として考えられる。CapecitabineによるHFSがどんな人で出現しやすいかは不明である。
肺がんでもS-1を使用することはあり、稀に手足症候群は出現する。加療方法としては休薬・ある程度濃度が下がるまで対症療法を行うこととなる。

S-1tegafur5-chloro-2,4-dihydroxypyridinepotassium oxonateを含んでいる経口のフルオロピリミジンである。
5-FUは代謝経路の中でDNA合成に必要なTSを阻害する部分と、DNA合成とは直接関係しないFBALに返還される経路とがあり、DPDによってFBALへと代謝されてしまう。そこでDPDの阻害剤(5-chloro-2,4-dihydroxypyridine)を加えることで効率的にDNA合成阻害経路へ進めることができる。HFSの原因としてFBALが指摘されており、これがS-1にてHFSが少ない理由と考えられる。



(担当薬剤部田代、まとめ児玉)

2017年5月17日水曜日

Bezlotoxumab for Prevention of Recurrent Clostridium difficile Infection.

Bezlotoxumab for Prevention of Recurrent Clostridium difficile Infection.

 2017 Jan 26;376(4):305-317.

【背景】
入院患者における感染性下痢症の原因で最も多い菌がClostridium difficile である。日本では一般的にバンコマイシン、メトロニダゾールなどが使用されることが多いが、初期治療を行った後でも35%程度の人が再発するとされている。
再発した場合は難治性・予後不良、そして50-60%で再発するとされる。更に治療方針は定まっていない。
CD関連下痢症の原因となるのはC. difficile トキシン ABであり、アクトクスマブ(actoxumab)とベズロトクスマブ(bezlotoxumab)は,それぞれ C. difficile トキシン AB に対するヒトモノクローナル抗体である.本研究は再発性CD関連腸炎に対するbezlotoxumab単独及びbezlotoxumab+actoxumabの有用性、安全性に関して報告したものである。

【方法】
二重盲検無作為化プラセボ対照phase3MODIFY I MODIFY II を行った.(両試験とも内容自体はほぼ同じ)

対象:C. difficile の初感染または再発患者に対し、標準治療である経口抗菌薬投与を受けている成人 2655
MODIFY I:①actoxumab単剤投与
bezlotoxumab10 mg/kg
actoxumabbezlotoxumab(それぞれ10 mg/kg
またはプラセボ
MODIFY II:上記②、③またはプラセボ
MODIFY Iactoxumab単剤投与は予定されていた中間解析後に
中止となった.

Primary endpoint:修正 intention-to-treat 集団において,点滴静注後 12 週間以内に再発した感染(最初の臨床的治癒後はじめての発生)

【結果】
<再発率>


bezlotoxumab
Actoxumab
+bezlotoxumab
プラセボ
MODIFY I
17% [67/386]
16% [61/383]
28% [109/395]
MODIFY II
16% [62/395]
15% [58/390]
26% [97/378]
最初の臨床的治癒が認められた割合は,bezlotoxumab単剤群 80%actoxumabbezlotoxumab 73%、プラセボ群 80%であり,持続的治癒(最初の臨床的治癒後 12 週間以内に再発がない)が認められた割合は,それぞれ 64%58%54%であった.

AE: 3 群で同程度であり、とくに頻度が高かったのは下痢と悪心であった.
 
【結語】
C. difficile の初感染または再発に対し抗菌薬投与を受けている患者において,bezlotoxumabは,プラセボよりも再発率が有意に低かった。一方actoxumabの追加による効果の向上はみられなかった.

discussion
本報告では、日本で一般的に使用されるバンコマイシン、メトロニダゾールのみと比較しbezlotoxumabを使用した時の方が再発率は低かったとしている。一方でlimitationとして、bezlotoxumab使用前の薬剤の種類・投与期間などに関しては一定ではなく、単なる治療不足の可能性や、米国などでは使用されることのある便培養(治療成功率が80-90%と高い)を施行したかどうかに関しては触れられていないなどが説得力に欠ける点である。

さらに、プラセボとの比較試験となっており実際に使用されるメトロニダゾールなどとの比較でない点や、分子標的薬であり薬剤自体が高価である点も踏まえると、(メトロニダゾール自体が非常に安価であることもあり)現状では実臨床使用には効果面、コスト面などでまだ時間がかかるであろう。


(担当感染Ns坂木、まとめ児玉)