<背景>
尿路感染症(UTI)は急性期の病院で発生する全感染症の20-30%を占める最も頻繁に発生する病院感染であり、特にカテーテル関連のUTI(CAUTI)は最も頻度の高い医療器具関連感染である。CAUTIは、腎盂腎炎、菌血症、心内膜炎などの重篤な合併症を引き起こし、入院期間を延長し、罹患率、死亡率、医療費を増加させる可能性がある。
これらの症例におけるUTIの最も重要な予測因子は使用期間であるため、カテーテル投与日の短縮は、CAUTI症例、合併症、および関連死亡率を低減するのに有用な手段である。
我々が知る限り、包括的なエビデンスに基づいた対策によるCAUTI現象の報告はスペインにはない。本研究の目的は、UCの使用を改善し、CAUTIの頻度を減らすように設計されたマルチモデル介入の影響を評価することである。
<方法>
スペインのSalamanca大学病院の内科病棟で行われた前向きの前後比較試験
対象:既存の長期UCを有する内科病棟に入院した患者
入院前48時間以内にUCを挿入した患者
入院中にUCを挿入した患者
除外:尿道カテーテルを留置していない患者、尿路変更をした患者
介入前(期間1):2013年1月-3月 ・・・Nsは試験についての前知識なしの状態
介入後(期間2):2013年4月-2014年4月・・・マルチモデル介入
マルチモデル介入ではUCの適切/不適切な使用や技術の教育などを行っている。
<結果>
|
P1
|
P2
|
|
カテ挿入件数
|
169
|
164
|
|
UC患者の入院期間
|
3.1日
|
2.6日
|
|
カテ挿入期間
|
12.7日
|
8.1日
|
4.5日間の短縮
|
カテ挿入割合
|
27.8%
|
16.9%
|
<0.0001
|
CAUTI発生数
|
31(18.3%)
|
16(9.8%)
|
0.025
|
抜去後の尿閉
|
6(3.5%)
|
13(7.9%)
|
0.086
|
期間2ではUC使用率は有意に減少したが、CAUTI発生密度率は有意に減少しなかった。
UC留置に関連する合併症に有意差はなかったが、UC抜去後の尿閉は有意ではなかったものの増加した。
<考察>
UCの長期留置を抑制しCAUTIの発生率を低下させる方策として、UCの効率的な使用に関する継続的な医療従事者の教育、UC使用中の積極的なモニタリングまたはリマインダーの使用、指示の中止、および対策の組み合わせがある。これによって、UC使用の減少とCAUTI発生頻度が減少したと考えられる。
UC留置期間はCAUTI発生の最大のリスク因子であり、感染予防の介入効果の指標として最も広く使用されているのがカテーテル挿入率である。この研究では、期間2にUCの使用が76%有意に減少した。これは他の研究と一致しており、我々の研究では不適切なUC留置の割合が先行研究で報告されていたものよりも低かったことを考慮しても顕著であった。
期間2では入院期間の大幅な短縮が確認された。この結果はこの種の介入の結果として先行研究でも報告されていたものである。しかし、患者の重症度などの在院日数に関連する変数の調整が不十分であるため結論付けることはできない。
Limitation:
・ランダム化試験ではなく、患者が一定でない点。(このバイアスを最小限にするために2年間同時期に行った。)
・ベッド占有率、UC挿入回数、患者の特性にも依存する。
・期間2では、糖尿病といったUTIの既知のリスク因子の頻度が高かった。したがって、期間2におけるCAUTI発生頻度の減少は、介入によるUC使用の減少に起因すると考える。
<結論>
一連のエビデンスに基づくマルチモデル介入は、UC使用率とCAUTIの頻度を減少させるのに有効であった。
したがって、このタイプの介入は、高いUC使用率および/またはCAUTIの高いリスクを有する部署で考慮されるべきである。
(担当:坂木、まとめ:児玉)