Prophylactic cranial irradiation versus observation in patients
with extensive-disease small-cell lung cancer: a multicentre,
randomised, open-label, phase 3 trial
Lancet Oncol. 2017 Mar 23. pii: S1470-2045(17)30230-9.
<Introduction>
これまでのメタアナリシスでは、化学療法/化学放射線療法後にCRに至ったsmallに対してPCIを行うことで予後を延長させるという結果であった。2007年のEORTC(欧州がん研究治療機関)は化学療法反応性のあった286人のED-small患者に対し検討した結果、有症状脳転移の出現リスクがPCI群で14.1%、観察群で40.4%、1生率が27.1%対13.3%であり、PCIにより予後が改善すると結論づけた。
しかしこの報告はいくつかの問題点を含んでいる。
①
EORTCでは登録時の脳の画像撮影を基本としておらず、PCI前に脳転移のあった患者を含んでいた可能性がある。
②
Smallに対して良反応性であるCDDPを使用した患者の割合が記載されておらず、PCI群とコントロール群で化学療法の内容が異なっていた可能性がある。
③
これまでの報告ではCRに至った場合PCIの有効性が高いことが知られているのにも関わらず、その割合を記載していない。
④
放射線の合計照射量、照射回数もバラバラである。
⑤
これまでの報告は予後を改善する、という結果の下PCIが推奨されているのにも関わらず、EORTCは有症状の脳転移の出現を減らすかどうかを主眼として試験デザインがされている。
以上の問題点を踏まえ、再検証したのが当報告である。
<Methods>
・47施設、化学療法開始までに細胞診ないし組織診でED-smallの診断となっていた患者。
・20歳以上、PS0-2で、2コース以上のPt製剤(CDDP or CBDCA)化学療法に対してresponseがあった患者。
・登録直前の4週間以内にMRIにて脳転移がないことを確認されており、かつCTで胸腹部の病変増大がないことを確認されている患者
・予測予後3か月以上、化学療法終了から6週間以内であること。
Exclusion criteria
・PCI部位の照射歴
・同時に他の腫瘍がある
・精神障害、妊娠中など
・試験中の症状緩和のため、脳以外へのradiationはokとした。
・経過フォローのMRIは全例3,6,9,12,1,8,24か月に撮影。その他症状出現などあり疑わしい場合も撮影した。
・AEはMRI撮影時に評価、認知機能に関しては登録時と12,24か月でMMSEを行った。
Primary Endpoint…OS、intension-to treatで解析された
Secondary Endpoint…脳メタ出現までの期間、PFS,AE,MMSEによる認知機能
<結果>
・中間報告では163人を解析した。OSの中央値は10.1か月vs 15.1か月となり、ベイズ流予測にてPCI群が上回る確率が0.011%となったため試験は中途終了とされた。
・最終報告ではOS中央値がPCI群で11.6か月、観察群で13.7か月であった。またPCI群の1年生存率、2年生存率は48.4%,15.0%に対し、観察群で53.6%, 18.8%と観察群の方が良好な結果となった。
・最も多かった副作用としては食欲不振、下肢筋力低下、倦怠感であった、治療関連死はなかった。
<Conclusion>
この日本での試験結果ではPCI群は予後を延長しなかった。
<Discussion>
化学療法反応性のED smallに対してのPCIはOSを改善しなかった。その理由として、EORTCでは全例の頭部画像撮影をしていなかった事が挙げられる。無症状の脳転移が存在しておりこれがPCIのresponseを見せたことがEORTCでのOSを良化させたと考えられる。また、脳転移の出現自体は観察群で多かったものの、OSには影響しなかった。これはPCI群での3rd,4th lineといったsubsequent
therapyを受けた割合が観察群の方が多かったからと考えられる。PCI群では施行後のAEがより顕著に、高頻度に出現しておりQOLの不良・AEの持続がsubsequent therapyの可能性、忍容性を下げてしまったからと考えられる。
今回の試験ではMMSEには差が出なかったものの、これまでの数多くの試験でPCIが認知機能低下に関係していることが示されている。脳転移のないこのリスクを踏まえ、ED-smallに対してのPCIは慎重に検討する必要がある。
撮影にMRIを使用できる現在、これまでのCTを使用したメタアナリシスはマッチしない可能性がある。
(担当;児玉先生、まとめ児玉 裕章)